第3章 崩壊
「…っ…離し…て…いや…」
煉獄が振り向くと、少女が天井に向かって腕を伸ばしているのが見えた。
先ほどまでは飛び起きるという言葉通り、悲鳴を上げて弾かれたように半身を起こしていたが、時間が経っているからか少し様子が変わってきている。
煉「…水橋少女。ここには恐いものは何も無い。安心して眠りなさい」
ベッドまで近寄ると、伸ばされた細い腕をゆっくりと下ろしてやる。瞼は閉じているが、苦しいのだろう眉根を寄せて呼吸も浅い。
汗で額に張り付いた髪を避けてやると、ピクリと瞼が震えた。その様子を見て、先ほどまで錯乱し暴れていたのを思い出す。そうなったら止めなければと、煉獄は身構える。
「…っ!!?」
ードサッ!
目を開いた瞬間、髪を避けてやっていた煉獄の手を振り払い月奈は半身を起こすが、ベッド上で体を支えられず床に落ちていた。
煉「水橋少女!大丈夫か」
「……」
四つん這いでうずくまる月奈の手を取り、肩を抱き起こす。
月奈はゆるゆると顔を上げたが、煉獄はその表情に違和感を覚える。
(目に力が戻ったのはいいが…表情が随分と穏やかだな…錯乱してる様子はない…のか?)
月奈の瞳は煉獄を見ていない。何かを探すように周囲を見渡している。
し「煉獄さん?何の音です…か…月奈さん!目覚めたのですね…っ!?」
扉が開いてしのぶとアオイが部屋に入ってきた瞬間、月奈は立ち上がり部屋を飛び出していった。
煉「胡蝶!神崎少女!水橋少女の様子はおかしい!意識が戻ってきているかもしれん!何をするか分からん!」
そう言うと、煉獄は部屋を飛び出し月奈の後を追った。