第14章 未知*
煉「その日は俺はお館様の所に行かなければならん。月奈は任務の復帰連絡が直にくるだろう、その前に一度生家に行っておこう」
「え?私の生家ですか?…っ!」
文から目を上げた月奈の目の前には、上半身の道着を脱いで汗を拭う杏寿郎の姿。驚いて顔を伏せたものの、興味が無いというわけではない月奈はちらりと目線を向ける。
(す、少しだけ…少しだけなら!)
煉「あぁ、生家に行きたいと言っていただろう!俺も時間がある内に一度行けたらとは考えていたんだ。…なんだ?」
「…いえ、杏寿郎様の体を見たことが無かったので…傷が多いことに驚いてしまいました」
よくよく考えれば、鬼との戦闘で無傷で帰還することが出来ることはすごい事なのだ。柱であっても、ケガを負うことなど隊士時代からあったはず。
煉「鬼殺隊で体に傷が無い者など珍しいのではないか?特に剣士ならば!それに、俺の体を見る機会がそんなにあるはずがないだろう、妙齢の女性に無闇に裸を見せたら俺は変態だな!」
ははは!と大きく笑い杏寿郎は道着を直して、見苦しい物を見せたなと杏寿郎は苦笑した。月奈も不躾に裸を見てしまった事を謝る。
(はしたない…欲に負けて覗き見なんて)
「もうじき夕餉の準備を始めますので、湯浴みで体を温めてきてください。雨で少し冷え始めましたから」
そうするとしよう!と言って部屋を出ようとした杏寿郎が突然立ち止まり、後ろを付いていった月奈は背中にぶつかってしまった。
「ぅぶっ!!…杏寿郎様どうされたのですか」
煉「月奈が温めてくれてもいいがな…ん?」
振り返った杏寿郎が月奈の頬に手を伸ばす。が、それに気付いた月奈は咄嗟に避ける。不味いことをしたと気付いたが時すでに遅し、杏寿郎は意地の悪い笑みを浮かべていた。
「あ…っと、とにかく湯浴みに…あわわ!」
煉「む?何故逃げる?…おぉ!月奈は相変わらず体術が上手いな!」
伸ばされる手を次々と払い落しつつ距離を取る月奈に杏寿郎は楽しそうに距離を詰めようと動いてくる。しかし、動けば動くほどに袖が絡んで動きが悪くなる。
(つい体が動いてしまった!…ってなんでそんな楽しそうにしてるの!?)
煉「着物の袖が邪魔だろうに、よく躱すな!だが、既に動き辛いだろう!」