第14章 未知*
「あ、雨だ…」
廊下を歩いていると、先ほどよりも暗くなってきていることに気付き空を見上げる。空には黒く厚い雲がかかってきており日が翳っている。ポツリポツリと落ちてき始めた雨粒が庭の草に当たっては土に染みていく。
「焼き芋…したかったなぁ。また今度か」
残念だなぁ、と呟いていると、道場から風を切る音が聞こえて来る。覗いて見れば竹刀を振る杏寿郎の姿があった。
(集中しているようだし、声を掛けると邪魔になっちゃう。もうしばらく後でもいいかな…)
廊下に座ると胸元から懐紙を取り出す。中には帰りの道中で拾った紅葉が二枚挟んである。紅と黄それぞれに色付いた紅葉を見てまるで煉獄家の髪の毛のようだと思ってつい拾ってしまったのだ。
「押し花にしようかな、しおりにしたら綺麗だろうなぁ」
親指と人差し指で茎の部分を挟んでくるくると回す。可愛らしい秋の彩りに月奈は笑みが零れる。
(秋は食べ物も銀杏にお芋に秋刀魚、山菜も美味しいものが沢山あるわ。食欲の秋何て言うけれど、本当に。太っちゃいそう)
煉「月奈?帰っていたのか!」
「只今戻りました!お土産も買ってきましたよ!」
声に振り向くと、手拭いで汗を拭う杏寿郎が道場から出てきたところだった。雨足が少し強まってきたからなのか、廊下が冷えてきている事に気付いた杏寿郎は、月奈を立ち上がらせる。
煉「土産?その紅葉か?」
部屋へと足を進めながら月奈の手にある二枚の紅葉を見る。まさか!と月奈が笑って紅葉を重ねて見せる。
「こうやって重ねると煉獄家の皆さんの髪のようではありませんか?なので、つい拾ってきてしまいました!」
お土産は別にありますよ!と隣を歩く月奈の頭を撫でてやると、嬉しそうに微笑む。その姿に杏寿郎は目を細めて微笑み返す。
「そういえば、街で蜜璃さんにお会いしました!次回の柱合会議について杏寿郎様も参加できるか心配されていらっしゃいましたよ」
煉「あぁ、先ほどお館様から連絡が来ていた。その時に俺の今後も話したいとのことだ」
部屋に着いて、一枚の紙を月奈に見せてくれた。その紙には確かに柱合会議の日時と今後について話したいという旨が綴られている。柱の任を降りることになるのだろうか、鬼殺隊に居続けられるのだろうか。