第3章 崩壊
ベッドの傍らに置かれた椅子に座ると、横たわる少女を見つめる。
ーどうして死なせてくれなかったの…か。
煉獄は気を失う直前の水橋少女から発せられた言葉を思い出していた。
鬼殺隊として、多くの人間を守ってきた煉獄からすると、やりきれない気持ちになる言葉だった。
政府非公認の組織がゆえに、いつも感謝されるわけではない。たった一人この世に残されるくらいなら、死にたい、殺してほしいと縋られたこともある。
煉「…冨岡もやりきれないであろうな」
ポツリと呟く。
運が悪かった、というのだろうか。あの時の少女の視線の先にいたのは冨岡だった。
縁側に少女を下ろしてそのまま傍らに立っていた自身からは、少女の表情は分からなかったが、冨岡ははっきりと真正面から目を見開いて立ち尽くしていた。
ーコンコン
煉獄はふと、音のする方に視線を向ける。
窓の外には1羽の鴉が控えていた。隊士になると必ず付く、相棒と言っても過言ではない鎹鴉だ。
ゆっくりと窓に近づき開放すると、鎹鴉は病室に静かに入ってくる。脚には1通の手紙が括り付けられていた。
煉「あぁ、家からか。ありがとう」
肩にとまった鴉を撫でてから手紙を開く。
外泊する旨を先ほど父の槇寿郎と弟の千寿郎に伝える手紙を送っていた。その返事だった。