第14章 未知*
二人が心配するのは月奈の機嫌だ。
花街に通う男と恋仲になってしまったと後悔するのではないだろうか、この場で恋仲を解消するのではないだろうかと。
そんな二人の心配を余所に、杏寿郎は文を一つ読み流すと月奈に同封されていた封書を渡す。
煉「どうやら定期報告をしてくれたようだ!これは月奈が読むようにと書いてある」
「そういえば、清花さんにはこちらに文を送るように話していましたね」
さも当然、といったように穏やかに会話する杏寿郎と月奈に、千寿郎が「あれ?」と声を上げる。
千「あの、花街ということはその…遊郭の遊女からの文ですよね?月奈さんは怒らないのですか?」
「怒る?誰にでしょう?」
槇「誰にといっても、杏寿郎しかいないだろう。宛名が杏寿郎なんだから」
(杏寿郎様に怒る…?)
煉「…なるほど!俺が廓遊びをしながら月奈と交際していると思われたのですか!」
「えぇ!?そんな誤解を?」
全員の反応がかみ合わず、いったん落ち着こうと既に冷めてしまったお茶を皆が飲む。誰からともなく息を吐くと、遊郭に潜入する任務の際に発生した問題について遊女の一人に協力を仰いでいたと月奈は説明をした。
「身寄りがないので、お世話になっている煉獄家に文を送って欲しいとお願いしたのは私です。ですので、お二人が心配するようなことはありませんよ」
槇「遊郭に潜入…?杏寿郎と月奈が?」
天元様もいらっしゃいましたよ!と月奈が答えると、槇寿郎が青褪めた表情で月奈に詰め寄る。隠としてか!?と。
「はい、隠としての任務です」