第13章 気付き
し「……あれは釣書ではありませんよ」
煉「そうか!しかし月奈に釣書が送られている、ということは事実なのだな!」
釣書を蝶屋敷に送ってくる、ということは鬼殺隊の隊士だろう。月奈に生家が無いことは隠されている情報ではない、調べればすぐわかる情報だ。
し「そういう煉獄さんも齢二十にもなれば釣書の十や二十は受け取っているのではないですか?」
煉「近所に世話焼きが多いからな!しかし特殊な仕事をしてるが故、全て断っているぞ!胡蝶もそうではないのか?」
し「えぇ、まぁ。それにしてもあれほどまでに自分の事を他人事と捉えている月奈は大丈夫なのでしょうか」
煉「遊郭潜入の時に思ったんだが、月奈は大切な物を持たないようにしている節があるんじゃないか!一度大切な物を失ったからこそ、なのかもしれんな!」
し「そうだとすると、無限列車の任務で煉獄さんがとった行動は…悪影響では?」
煉「しかし俺は死んでない!約束を違えずに済んだのは朝霧少年と月奈のおかげだな!」
いただきます!と手を合わせて食事を始めた杏寿郎は、考えても仕方ないと諦めたようだった。
その頃、月奈は昼餉を食べながら、恋仲について考えていた。
(杏寿郎様と恋仲…いやいや、やはり分不相応だわ。…でも恋仲でもないのに触れ合いを求めるのは駄目よね。そもそも接吻していることが問題だわ)
「いや、それも遊郭での話だもの。もしかしたら…そういう意味ではないのかもしれないし…」
でも、約束の意味を自分は取り違えていた。あれは恋仲になったといえる約束だったのかと皆の反応で分かった。
「恋仲は欲を感じる相手…まぐ…ぅあぁぁあ…」
十五の月奈にとって、そういう知識はまだまだ未知の領域だ。接吻すらまともに自分から出来ないということを知った時、自分がどれほど子供なのか思い知った。
植木屋との一件があってから、家族はそういった情報を与えることは無く、自分から知ろうとも思っていなかったのだ。齢十三の頃から性的教育が始まることが多いが、月奈は両親の方針で触れることが無かったのだろう。
大きくため息を吐くと、食事もそこそこに部屋を抜け出し庭の方へと向かう。ガーゼのみで覆われた左目は、薄く光が入るようになり包帯を巻かれていた時よりも圧迫感が無い。