第13章 気付き
「そういえば千寿郎さんにも言われたことあります、発言が迂闊って…」
うーんと難しい顔で腕を組んだ月奈に、その部屋に居る全員が脱力する。
し「ちなみに、その時はどのような話を?」
「何だったか…あぁ!最終選別から戻った日です!」
煉「最終選別から戻った日?…好いた女に攻めの姿勢を取れという発言のことか!」
し「それも確かに迂闊です、発破かけてどうするのですか」
話せば話すほど周囲が脱力していることに気付いた月奈は、何が悪いのか分からない。という表情のまま首を傾げている。帰るぞー、と天元が声を発し気が付いた時には、全員が部屋から出て行った後、月奈は独り部屋で茫然とするのみだった。
ー全員に同情されるとは…不甲斐なし!
部屋に戻った杏寿郎は、ベッドの上で胡坐をかいて先ほどの出来事を反省する。たしかに、ハッキリと「恋仲」について言及したことは無いのだ。
では何故自分を受け入れるのか。
そこを考えてはみた。恋仲ではないのに受け入れるという行為は酷く軽い、月奈はそんな人間かと思っては否定する。
煉「そんなはずはない。が…」
そうだったとしたら、誰にでもそういう接し方をしているのでは?と悪い考えが首をもたげる。しかしどれだけ考えても同じ場所を行ったり来たりするだけで進展が無い。
煉「落ち着いたら月奈に直接聞くしかないな」
背中に入れた枕に体を預け溜息をつくと、部屋の扉を叩く音が聞こえた。膳を持った胡蝶が入ってくると、昼餉の時間ということに気付く。
し「随分長く話してしまいましたが、傷は痛みませんか?」
煉「あぁ、それは問題ない!それどころじゃないという方が正しいかもしれん!」
膳を受け取った杏寿郎は苦笑している。しのぶから見ても杏寿郎が誤解するような行動を取っていたことはないと思う。何故あれほどまで鈍いのか、不思議としか思えない。
し「宇髄さんの不用意な発言で発覚したことでしたが、煉獄さんと月奈のすれ違いが無くなりそうでよかったですね」
煉「あぁ、本当に…恋仲ならば問題ないだろうと他の男を警戒していなかった!」
し「煉獄さんが相手となると挑んでくる人間はそうそう居ないのでは?知らない相手は釣書を送ってくるようですが…」
煉「なるほど!先ほど胡蝶が持っていた紙は釣書か」