第13章 気付き
問い詰めようと口を開いた天元は、月奈の病室の扉が開き雛鶴が手招きをする姿を見て杏寿郎の肩を叩いた。
宇「その話は後にしようぜ。呼び戻しだ」
部屋に入った二人は、ピリピリとした空気を肌で感じゴクリと唾を飲み込んだ。最初に口を開いたのはしのぶだった。
し「先ほどの宇髄さんの発言に関してですが、別の問題が浮上しましたので不問としましょう」
宇「別問題?」
煉「俺も宇髄から話を聞いて疑問が出たのだが、質問しても良いだろうか!」
未だ考え込むように真面目な表情の杏寿郎が声を上げると、言い訳でもするのだろうかと女性陣は不思議に思いつつ発言を促した。
煉「俺と月奈は恋仲だと思っていたのだが…違ったのだろうか!」
「え!?杏寿郎様とそのような言葉を交わした記憶が無いのですが…」
煉「…よもや…では、あの約束は何だったのだ?」
し「そもそも、その約束とはいったい何なのでしょうか?」
昨日から度々聞いていた〔約束〕の言葉。
疑問を抱いていたしのぶは、二人がすれ違った原因はそこなのではと思い会話に割って入る。
「何があってもお互いを帰る場所として生きる、と約束しました。それは私が簡単に死を選んでしまうことを引き留める為の…え?」
宇「嘘だろ…おい、煉獄。しっかりしろ」
煉「そこまでしても月奈には伝わってなかったと。十五の少女だと気を遣った結果がこれか…」
女性陣は複雑な表情をしながらも、月奈の恋愛に関しての鈍さが想像以上だったことで、杏寿郎に憐憫の目を向けずにはいられない。
し「んー…これは月奈が悪い、といったところで決着ですかね。しかし、この鈍さを考慮して言葉にしなかった煉獄さんにも非があるとすれば月奈が〔やや悪い〕くらいでしょうか」
須「さすがに驚きましたー。炎柱様の行動から周囲はわかっていましたが、それでも本人は気付かないもんなのですね」
ま「…月奈が十五としても、これでは先が思いやられるね」
口々に鈍いと言われた月奈は、先ほどまで味方だった人間の手のひら返しに「え?え?」と困惑する。
雛「そういう話であれば、手を出しても問題無いのかもしれないわ。月奈も迂闊な発言や行動には気を付けないと苦労するわよ?」
(迂闊って、そういえば…)