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【鬼滅の刃】闇を照らして【煉獄杏寿郎】

第12章 失ったもの



アオイが作り直してくれた御粥を食べて落ち着いた月奈は、目の疲れからか知らぬ間に眠りに落ちており、病室に雅雄が入ってきたことに気付かず眠り続けていた。外はもうすっかり夜も更け、闇が広がっているばかりだ。

すぅすぅ、と寝息を立てる月奈の顔は月明りに照らされているからか、青白く見える。その肌に巻かれた包帯の白さが痛々しさを強調しているように雅雄は感じた。

雅「稀血だというのに、ケガを気にせず鬼に向かっていくなんてすごいな。腕の傷があの炎柱の為の物だなんて…悔しいくらいだ」

ベッドの傍らに立ちボソリと呟いた雅雄は、苦笑を漏らし男にしては綺麗な指で布団から出ている腕の包帯をなぞる。

し「朝霧さん、女性の病室に無闇に入るものではありませんよ。たとえ心配であっても、です」

雅「胡蝶さんが同伴ならよろしいのですか?」

背後からかけられた声に、指がピクリと反応する。振り向くと、しのぶの隣には杏寿郎が立っている。雅雄は杏寿郎に視線を留めたまま意地悪くしのぶに問いかけると、そういうことではありませんよと笑顔でかわされた。

煉「朝霧少年。胡蝶に当たるのはやめてくれ、俺が気に喰わないのだろう」

いつものような覇気が感じられない声の調子に、怪我が酷いことが伺える。

し「月奈が眠っている部屋でやり合うのはやめてくださいね二人とも。やり合いたければ、道場でも外でもこの場所以外でどうぞ」

雅「いえ、まさか。炎柱様とやり合う場面を見せたら月奈さんが悲しみますから。でも一度は炎柱様と手合わせをお願いしたいですね」

ニコリと微笑みを向けた雅雄に、ピクリと眉を動かす杏寿郎。目が笑っていない、それにいつものことだが棘を含んだ物の言い方、いつにも増して棘が強い。

煉「…猗窩座との戦闘時には、朝霧少年の助けのおかげで俺はこうやって生きている、それは素直に感謝している。だからこそ月奈との約束を違えずに済んだ」

雅「俺が間合いに割り込む瞬間、あの鬼の攻撃を避けようとしなかったのは気のせいではありませんよね?月奈さんもそれは感じ取っていたはず。…死ぬつもりだったのですか?月奈さんの前で」

小声ながら、少しずつ怒気をはらんでいく声音にしのぶはチラリと月奈の寝顔を見下ろす。
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