第3章 崩壊
ーすまなかった。
煉獄はしのぶに向かい謝る傍ら、冨岡はただただ、あの時向けられた月奈の目を思い出していた。
し「…あの様子では、いずれ思い出していたのでしょう…煉獄さん、誰も悪いことはしていませんよ。謝らないでください…」
月奈が気を失ってから2時間は過ぎていた。外は、もうじき日が暮れる時間。
誰も月奈の病室から離れられずに居た。
煉「胡蝶、少し休んだらどうだ?冨岡は先ほど鴉が来ていただろう、任務は行かないとお館様がお困りになられる」
冨「…水橋を一人には出来ない」
し「あら、冨岡さんが居たからって何が出来るのですか?月奈さんを理由に任務に行かないなんて駄々をこねるのはやめてもらえますか?」
しのぶの顔からはいつもの微笑みは消え、疲れが滲んでいた。それでも口調はいつも通りで早く任務に行けとせっつく。
し「月奈さんのような方がいない世の中にするために私たち鬼殺隊があるのです。煉獄さんは非番で今日は付き添ってくださるそうですし、大丈夫ですよ。鬼を1匹残らず滅して来てください」
普段は、鬼と仲良くしましょう、と変わった理想を話す胡蝶から「鬼を滅する」という言葉が出てきて冨岡は少し驚いた。
ーそれほどまでに胡蝶は鬼に怒っているのか。
それを感じ取った冨岡はそれ以上は何も言えず、任務に向かうべく病室を出て行った。