第3章 崩壊
「大丈夫です…痛みは治まりましたから。転んだ時に頭ぶつけちゃいました…」
へにゃり、と笑って月奈は嘘をついた。
「よく姉上はドジだって笑われてたんですよ……誰に…だったかな…あれ?…私に弟がいたんだっけ?…っ!!」
そう言った途端、月奈の顔が強張った。
また頭痛が襲ってきたのだ。
浅い呼吸を繰り返し、誰…誰…とうつろに呟く月奈を抱き起し、しのぶは背中をさする。
し「ゆっくり呼吸しましょう月奈さん、大丈夫ゆっくりですよ、ゆっくり…」
ー助けて、助けて…痛いよ、やめて…
頭の中で響くこの声は誰のものだろう。
どうしてこんなに走ってるの。
呼吸が辛いのに止まれない。
「止まったら鬼に喰われてしまう…」
呟いた月奈の目が焦点を結び、冨岡を見つめた。
あぁ、あの羽織…あの夜の…
「どうして…私を死なせてくれなかったの…」
そこに居た全員が息をのんだ。
思い出してしまったのかと、しのぶは抱きしめた月奈を見るが、既に目を閉じ体から力が抜けていた。