第11章 再会
煉「皆無事だ!怪我人は大勢だが、命に別状はない。君はもう無理をせず…」
ドォオン!!!
杏寿郎の言葉を遮るように数メートル離れた場所で轟音とともに砂煙が上がる。三人の姿勢が一斉にそちらを向き、新たな敵を認めた瞬間に地面を蹴った鬼はその場から姿を消していた。
「!?な、なんの音…?」
音がした方向は先頭車両辺りと分かり月奈は一抹の不安を感じた。先ほど鬼を倒したはずなのに。
後「なんだ?でかい音だな…」
無事に合流できた隠達と乗客の救助にあたっていた月奈は、後藤の声で乗客の手当てを再開する。ぼうっとしている時間はない、怪我人が大勢なのだ。
(鬼の気配がするのは、倒した鬼の気配が残っているからなのよね。鬼は群れないっていうもの)
この場が落ち着けば先頭車両に向かえる、自分の仕事は事後処理だ。と言い聞かせて手早く応急手当を済ませて行く月奈。
後「炎柱様はどこに向かった?まさか今の轟音がした場所に…」
「先頭車両に向かうと言っておられました。他の剣士が乗車していた位置です。音がしたのは先頭車両方向なのでもしかしたら…」
そうかぁ、と呟いた後藤は月奈の手にあった消毒薬をさり気なく取り上げる。月奈は「?」の表情で後藤を見ると、周囲を見渡してから後藤は頷いた。
後「俺達も先頭車両に向かっていくか、手際が良い後輩で助かるよホントに」
後藤につられて周囲を見ると、確かに救助は完了しておりあとは数人のケガの手当てを残すだけのようだ。隠も今回の任務で多く配置されている、合流した時に後藤を含めた先輩隠達でお互いの持ち場所を相談していたので各車両の処置を分担できているはず。
後「その前に、水橋のケガも消毒するぞー。血まみれで片目包帯って中々に怖いぞ」
ホラ、と後藤に顔布を下げられると月奈は苦笑して頭巾を取る。簡易的な処置の為左目に巻いた包帯には血が滲んでいるが、痛みはさほど無い。
後「あー、これはちょっと大きく切ってるな。また胡蝶様に怒られるんじゃねーか?」
「でも、失明はしてないはずなので大丈夫です。…しのぶさんやっぱり怒りますかね?でも乗客を助けた時の傷だし、仕方なかったというか防ぎようがなかったですし…」
いや、俺に言い訳されてもな。と後藤は消毒をしながら呟いた。