第11章 再会
どれくらい経っただろうか。
杏寿郎は宣言通り五両を一人で守り続けている。
(切られた所の再生が遅くなるのは、細かい斬撃を全体に与えるからなのか日輪刀の効果なのか…確かに私が加勢に出たところで意味がない、寧ろ邪魔になるだけだわ)
「竈門様が言っていた列車と鬼の一体化…鬼の首を切ったらこの列車は元に戻るのかしら。先ほどの呻き声は確かに列車からだった…」
せめて、と同じボックス席に眠っている乗客達を抱きしめながら月奈は何が起こるか分からない不安を抱えていた。鬼の力が今まで出会った鬼とは違い過ぎる。
「たった一匹の鬼がここまでの被害を出せるなんて…だからこそ柱が呼ばれたということ」
それはつまり、柱は常にこのような戦いに身を置くということ。月奈はこのような力を持つ鬼に出会ったことなど無かった、だからこそ簡単に考えていた。
(今まで出会っていた鬼はこれには遠く及ばない程に弱かったということ、この鬼と対等に戦う皆が凄い胆力だわ。今回のような鬼がまだまだ居るとすれば、鬼を殲滅なんて生身の人間が本当に叶えられるの?)
考え事をしていた月奈の耳に突然、つんざくような叫びが響き列車が大きく軋んだ。車体が浮く感覚に乗客を抱きしめる腕に力を込める。
(列車が横転する!!?)
横転する衝撃で乗客が外に投げ出されていく光景が月奈の目に映し出された瞬間、自分も窓に強く体を打ち付けられ外に投げ出されていた。
「…う…」
全身に痛みを感じながらも、目を開くが左目に何かが流れ込んで来る感覚に目を開けていられない。右目だけで周囲を見回すと、ほとんどの乗客が外に投げ出されているようだと分かる。
「早く救助をしないと…列車の横転に巻き込まれた人もいるわよね…」
煉「月奈!この列車に乗っていた隠と協力して乗客の救助を…!」
振り向いた月奈の姿に杏寿郎は目を見開くと、頭巾を剥ぎ取る。突然の杏寿郎の行動に月奈は訳が分からずオロオロするしかない。
煉「左の瞼を切ったか、止血できるか?眼内にも血液が流れ込んでいる、任務が終わったら胡蝶の所に向かおう」
(血液が流れ込んできたから目が開けられなかったのね)
自分の状況がよく分からなかった月奈は、杏寿郎の言葉で自分のケガに気付いた。