第11章 再会
迫る触手を次々と切り裂きながら炭治郎は状況を簡潔に月奈に話す。どうやら、鬼が列車と一体化したらしい。
(列車と一体化って。この列車に安全な場所は無いってこと!?)
切り裂いた先からどんどんと再生していく触手を見ながら、行方不明ではなく鬼の触手に喰われたのだと遅まきながら気付き絶望的なのではないかと考えてしまう。
(駄目だ、犠牲者を出してはいけない!諦めるな!)
乗客に巻き付こうと伸びた触手に手甲鈎を刺して抑え込むと、別の触手が月奈に向かって伸びてきた。しかし、乗客になおも巻き付こうとする触手から手甲鈎を抜く訳にはいかない。
月奈が目をきつく閉じて攻撃に身構えた瞬間、再度列車が轟音とともに大きく揺れた。
煉「竈門少年!」
座席の間に倒れこんだ月奈は、杏寿郎の声に目を開く。的確に指示を与えている杏寿郎はさすが柱というべきだろう、状況を冷静に判断している。
杏寿郎の斬撃の影響だろうか、再生が幾分か遅くなっている気がする。月奈は体を起こすと、襲われかけていた乗客が無事なことに安堵した。
煉「よもや、この車両だったか月奈!」
声を掛けられ振り向くと、先ほどまで炭治郎の目の前に居た杏寿郎がいつの間にか月奈を抱き上げていた。
「杏寿郎様!?」
煉「俺は後方五両を守らねばならん、隠の君は戦う必要はない」
ふわりと後方に体を向き直した次の瞬間、炭治郎の居る車両があっという間に遠ざかり月奈は移動速度の速さに目を回して杏寿郎にしがみついた。
(五両を守るって…一人で?)
途中で善逸と禰豆子が戦っている姿が見えた。伊之助は姿が見えないがおそらく別の場所で戦っているのだろう。
「杏寿郎様、私も戦います。触手を防ぐくらいなら…」
煉「自分自身の身の危険を感じたならば戦うことを許すが、無闇に敵に突っ込んで行くのは許さん。俺が守る五両の中で大人しくしていろ。君は剣士ではなく隠だ」
ぐぅ、と言葉に詰まった月奈は座席にそっと下ろされると、項垂れるしかなかった。確かに前線に立つことがないように隠になった、隠ならばと鬼殺隊に入ることを皆が許してくれたのだ。
「杏寿郎様、ご武運を」
待つことしか出来ないのが口惜しい。かけられた言葉に杏寿郎は静かに頷いて車両を離れて行った。