第11章 再会
鬼の気配が微かに残る客車に、眠っている車掌。いったい何が起こっているのか分からない月奈は、先輩隠達に指示を仰ごうと考えてあることに気付いた。
(この状況、先輩達も眠っているかもしれない…?そうだったら起こさないと)
あまりにも静かすぎる車内は不気味な雰囲気を漂わせている。こんなことなら隊士達がどの号車に乗ったのか確認しておくべきだったと月奈は後悔した。しかし後悔先に立たずだ。
「私の乗っていた号車には他の隊士は誰も居なかったのよね。後方車両に向かうべきかな」
後方車両へと足を向けた月奈は、列車の上を走るような足音が聞こえて首を傾げた。
走る列車の上を走るなんて普通の人間は出来ない、もし上に人がいるならそれは隊士か鬼だ。
「あぁもう!どういう状況なのか分からない!とにかく隊士と合流しないと!」
そう叫んだ瞬間に列車がぐらりと傾き、床や天井から得体のしれない物体が車体を侵食してきた。突然のことに月奈は体を支えられず座席に捕まるが、侵食してきた物体が蠢いている光景は鳥肌が立つ気色悪さだ。
「なにこれ…行方不明って、これに皆吸収されたとでもいうの?」
頭を軽く振ると顔布と頭巾を着けて、手甲鈎を出す。
目標は隊士との合流及び乗客を守ること。それだけを考えて行動あるのみだ。
ガシャン!!!
隣の車両に移ると窓が割れ、人影が車内に飛び込んでくる。
「きゃっ…竈門様!!?」
炭「月奈さん!?どうしてここに…うわっ!ごめん!」
窓から入ってきた炭治郎と衝突しかけた月奈は、床に倒れこんでいた。月奈だと気付いた炭治郎は慌てて助け起こすと車内を見渡す。
炭「月奈さんは隠だったんだね。おっと…!」
「はい、なので戦力にはなりません…が!」
少しなら自衛する手段は持ってますよ。と炭治郎が切りつけた触手と逆側の触手を切り裂いてみせる。リーチの長い刀より近接武器の手甲鈎の方が車内では戦いやすい。
「竈門様は私を気にせずに戦ってください!」
静かだった無限列車は一瞬で異様な状況になっている。一般の乗客が無事なのかすら予想できない、戦う力があるならば、自分が隊士の足手まといになるわけにはいかない。