第11章 再会
「立派な列車。この列車で行方不明になる人がいるってどういうことなんだろう…」
月奈は炭治郎達より一足早く駅に到着していた。ホームに入ると、目の前には大きな蒸気機関車が停まっている、時折汽笛とともに黒い煙を煙突から吐き出しているため、周辺は少し煙くも感じる。
煉「月奈!早い入りだな、感心感心」
「杏寿郎様!お疲れ様です」
振り向くと杏寿郎がホームに入ってくる姿が見えて、月奈は駆け寄った。隊服は着ているが、頭巾と顔布はこの人込みの中では目立つ為外している月奈の顔は嬉しそうに笑っている。
煉「どうした?随分機嫌がいいな!」
「任務の前に杏寿郎様のお顔が見られましたので!任務頑張ってくださいね、お怪我なさらないように祈っております!」
煉「そういう月奈も任務だろう!ケガのないようにな!」
杏寿郎が頭を撫でると、髪を纏め上げている簪に気付き嬉しそうに微笑んだ。その表情を見た月奈もつられて微笑む。
「杏寿郎様が下さった簪ですよね、頭巾で隠れてしまいますが…いつもつけようと思います。帰る場所を忘れないように」
煉「…俺だといつから分かっていた?」
(あ、この顔は驚いている顔だ)
「いつからと言われましても…最初からです。もちろんしのぶさんもご存じかと。あ、後藤さんは頑として口を割りませんでした、杏寿郎様が分かり易すぎるのでは」
煉「よもや…最初からとは…」
(あ、落ち込んだ。気付かれていないとずっと思っていたのかしら。まぁいいか)
「そろそろ乗車しておきましょうか。私は指定された号車に乗らなければいけませんが、杏寿郎様は?」
煉「俺はそこまで指定されていない。鬼が出る場所は分からんからな!」
では、と頭を下げてそれぞれ列車に乗り込むと、月奈は空いている座席に腰を下ろしホームを眺める。視界に見覚えのある羽織が見えた気がするが、その三人の後から駅員が追いかけていく姿を確認してそっと視線を外した。
(なんで追いかけられてるのかしら…どこにいても賑やかな三人、いや四人ね)
なんだか大量のお弁当を抱えた杏寿郎も見えた気がする月奈は更に溜息をつく。そうこうしている間に汽笛が大きく鳴らされゆっくりと列車が動き始めた。