第9章 穏やかな時間
(改造…蜜璃さんの隊服のようなものだろうか…)
自分の胸の大きさを考えると、蜜璃のような隊服では余りに余ってみすぼらしいことになるだろうと容易に想像できた。
(う、悲しくなってきた…想像しなければよかった)
し「私の隊服も支給の際に改造されていました、その時の隊士が前田さんでしたので覚えているのですよ」
蜜「…私はしのぶちゃんと会うまで、これが普通の隊服だと思っていたわ」
「作り直したのですか?カナヲちゃんのようなスカートだったりしたのですか?まさか蜜璃さんと同じ…」
月奈が言い終わるより先に「油をまいて火をつけて灰にしました」と笑顔でしのぶが言った瞬間、月奈と蜜璃は笑顔のまま青褪めた。部屋の気温も少し下がったのではなかろうか。
蜜「あ、そ、そうだ!月奈ちゃん、着替えて見せてよ!」
話題を変えようと、蜜璃は大きな声で隊服に着替えるように促す。その助け舟に、月奈は勢いよく頷き、着物をかけた衣紋掛けの裏で着替える。
「どうでしょうか?まだ着慣れていないのでなんだか恥ずかしいですね」
顔布も付けているので、少し声がくぐもっている月奈が二人の前でくるりと回る。
し「大きさもちょうど良さそうですね。似合ってますよ」
蜜「似合ってて可愛いわ!…あ、千寿郎君もそう思うわよね!」
丁度お茶を持ってきた千寿郎が、開いたままの襖から顔を覗かせる。
千「わぁ、月奈さん隊服姿似合ってますね!兄上も父上も喜びますので、是非見せてあげてくださいね!」
にこーっと笑顔で褒めてくれる千寿郎に、女三人は「可愛い!」と声に出してしまい、千寿郎は苦笑してから恥ずかしそうに部屋を出て行ってしまった。
蜜「そういえば、師範は連日任務でこちらには戻っていないって聞いているけれど、今回の任務は随分時間がかかっているのね」
し「今回は潜入して諜報活動が主だそうですよ。ですから時間がかかっているのでしょう。宇髄さんと煉獄さんのお二人が事前調査を行っているのですって」
(諜報活動…そういうことも隊士は行うのね。隠の仕事かとばかり思っていたわ)
なるほど、と頷く月奈にしのぶは「その件で協力依頼が来たのですよ」と微笑む。