第9章 穏やかな時間
「あ、あの?…え?」
自分の手を取りニコニコと微笑む金髪の少年の素早さに月奈は目を見張った。
善「俺は我妻善逸、君可愛いねぇ!君の応援があればあの苦い薬だっていくらでも飲めちゃうよ!今すぐ飲むから、この後お庭に散歩行かない?」
し「…善逸君?月奈から離れてくださいね」
炭「善逸!!恥を晒すな!ごめんね、えーっと、月奈さん?」
善「月奈ちゃんって言うんだねぇ!!名前まで可愛いねぇぇ!!…って炭治郎ぉ、言い方酷くない!?」
怒涛の展開に目を白黒させている月奈はしのぶに庇われ、善逸と呼ばれる金髪の少年は額に傷のある少年に背後から羽交い絞めにされていた。
(あれ、炭治郎って確か鬼になった妹がいるっていう…)
し「月奈、またお館様からの呼び出しがあると思いますのでそれまではゆっくり休んでくださいね。湯冷めする前に帰ったほうがいいですよ」
「あ、はい。では…また来ますね」
しのぶに促され、炭治郎達に「お邪魔しました」と一礼して杏寿郎の元へと向かった。背後からは善逸が月奈の名前を叫んでいるのが聞こえた。
煉「?誰が月奈の名前を呼んでいるんだ…?」
耳に届いた月奈の名前に反応して杏寿郎は顔を上げた。玄関で腰を下ろしている杏寿郎は聞き覚えの無い声が男の声であることが気になった。
「杏寿郎様!お待たせしました!」
掛けられた声に振り向くと、廊下を早足でこちらに向かってくる月奈の姿がある。杏寿郎はゆっくりと立ち上がった。
煉「大丈夫だ!さぁ、帰ろうか!」
煉獄家まで向かう道を二人並んで歩きながら、最終選別のことを主に話し、杏寿郎は逞しくなっていく月奈を嬉しく思いつつも寂しく感じた。
千「月奈さん!お帰りなさい!」
槇「月奈さん、よく戻ったな。しかも無傷とは」
煉獄家の門前には、槇寿郎と千寿郎が出迎える為に立っていた。月奈は嬉しくなり走り寄って二人に抱き着いた。
「只今戻りました。槇寿郎様、千寿郎さん…!」
必ずここに戻ると決意して最終選別に臨んだ、だからこそどれだけ辛くても踏ん張れたのだ。