第8章 最終選別
今回、月奈という剣士ではない人間と出会ったことにより雅雄の気持ちはかなり救われていた。もちろん自分は剣士だが、それを我が子には強要せず鬼殺隊の助けになって欲しいと考えられるようになった。
ー剣士の輩出は途切れようとも、鬼殺隊の助けになってきた歴史を絶やすことは出来ない。
「朝霧様、今日の目標地点に到着です。想定よりも早い到着ですが、もう少し先に進みますか?」
月奈の声にふと顔を上げると、確かに目標地点に早く到着していることに気付いた。日の出まではまだ少しありそうだが、周囲は静かなので、今日はここで待機しても大丈夫だろう。そう考えた雅雄は立ち止まり木の上の月奈に声をかける。
雅「この辺で今日は待機にしましょうか。周囲には鬼もいないようですし、まだ日数はありますから問題なく期限日には山を抜けられそうです。昨日のような良い木はありそうですか?」
「…もう少し先に大きな木が見えるので、今日の拠点はそこでどうでしょうか?」
いつの間にか隣に立っている雅雄に指し示した先には大きな木がある。
雅「良さそうですね。今日はそこにしましょう」
危険を察知して対処できる雅雄と、野営能力が鍛えられている月奈は得てして良き相棒に出会えたのかもしれない。
すっかり野営にも慣れてきた今日は、選別最終日を迎えていた。月奈と雅雄は、山を抜ける為に東へと向かう。
「朝霧様、ようやく最終日ですね。さすがに五日目辺りからはくたびれました…今日の夜明けで山を抜けることが出来ればいいんですよね?」
雅「あぁ、仲間が減っていくのを見るのはさすがに精神的にな…。山を抜けて、一番初めに集合していた広場に戻ればいいはずです」
最初の頃は方々に散らばった受験者達につられて鬼も同様に散らばっていたが、受験者が減れば残った受験者に対して群がる鬼の数が増えてくる。
(相手をする鬼の数が増えることは仕方ないけれど、その分あの広場に集まっていた受験者が減っていることが分かることがしんどかった…)
今日はどれだけの鬼を相手にしなければならないのだろうか、二人の口数は四日を過ぎたあたりから減っていた。
最終選別は、鬼のいる山で七日間生き抜くことが合格条件。ただそれだけだと思っていた月奈は自分の考えの甘さを痛感していた。