第8章 最終選別
雅「申し遅れました、俺は朝霧 雅雄〔あさぎり まさお〕と申します。すみません、武器が珍しくてつい近付き過ぎました」
咳ばらいを一つして、名乗る雅雄は照れからか頬を掻いている。整った顔で微笑むものだから、先ほどの冷たい印象とは打って変わってとても華やかな印象だ。
雅「それで、水橋さんは何故日輪刀を持つ剣士と手を組みたいと?」
「一つに稀血であること、もう一つに逃げ回るのではなく倒せる力が欲しいこと。倒す力、すなわち首を切ることが出来る人間、日輪刀を持っているならば尚良し。といったところです」
逃げ回るだけではあと6日間はとてもじゃないが保たないだろう、と感じている。体力ももちろんだが、精神的にも疲弊していくのは1日乗り越えただけでも感じていた。
「守ってくれとは言いません。私の稀血が危害をもたらす場合は、私を置いていってください。何より朝霧様のお命を優先してください」
雅「…それは君を生贄にしろということ?それはちょっと…」
躊躇した雅雄に月奈は、それならば、と一つ提案をする。
「私を喰らった鬼は力を得ます。どれくらい得るのかは未知数ですが、その鬼を野放しにする訳には参りません。完全に私の血肉を吸収する前に鬼の首を切ってください」
じっと見つめられた雅雄は少し動揺したが、すぐに頷いた。受験者として、たった一人で鬼に立ち向かうより協力者がいる方が心強い。
雅「分かりました。しかし、水橋さんが犠牲にならないように俺は動きたい。だからこそ、今日の夜は一緒に行動しませんか?お互いの動きが合うかどうかも分かりませんので、確認しましょう」
如何せんその武器の使い方が良く分からないので、と雅雄は手甲鈎を指差し苦笑した。もちろん、今日からでも協力できるなら月奈にとっては願ったり叶ったりだ。
「では、あと数時間で夕暮れになりますので、それまで私の拠点に来られますか?」
水筒に水を入れて立ち上がった月奈は雅雄を伴って拠点へと戻った。