第2章 忘却と願い
し「あらあら、冨岡さん。その部屋は面会謝絶中ですよ、扉の札が見えないのでしょうか?」
冨岡さん、と呼ばれた男は背後から伸びた白い指の先を見つめる。扉には〔面会謝絶〕の札がしっかりとかかっている。
冨「…そんなことはわかっている。少女は…そんなに悪いのか?」
溜息をつき、しのぶに向き直る。
静かに微笑むしのぶを見つめる瞳は、まるで凪いでいる海のような青色だ。
?「む?冨岡と胡蝶か!丁度良い、少女の面会をしたい!」
無言で見合っていた二人は声のした方を見る。
そこには、明朗快活という言葉が当てはまるような元気な声を張り上げる男が立っている。
し「…煉獄さん。ここには入院患者が大勢いらっしゃいますので、もう少し声量を落として頂けると有難いのですが?あと、先ほど冨岡さんにもお話しましたが、彼女は面会謝絶中です」
にっこりと微笑んで札を指差すしのぶのこめかみには、青筋が立っていた。
煉「…むぅ、すまん!しかし、かなり長い期間少女が療養しているからな、そろそろ見舞いをできないものだろうか?」
キリッとした太目の眉を下げて謝る声は先ほどより少々抑えられている。大声に悪気がないのは分かっているが、少々うるさいですね…としのぶは思い溜息をついた。
し「面会は出来ませんが、お二人に少しお話があります。ついてきてください」