第2章 忘却と願い
「あの、アオイさん…?」
覗き込む月奈にハッと意識が戻ったアオイは、
ア「散歩は構いませんが、食事を摂ってお薬を飲んでから行ってくださいね」
と手にもっていた朝食を床頭台に置く。
は~い…と薬の入った袋を苦々しく見つめながらご飯を食べ始めた。
その姿を見る限り月奈は幼さを残していて、容姿も相まって可愛らしい。
後でお膳を下げに来ます、と言い残しアオイは部屋を出る。
月奈は緊急だったからと、個室に入院している。
他の部屋はどうやら6人程入る大部屋もあれば、和室もあるらしい。
(治療費、いったいいくらになるんだろう…)
もぐもぐと食事を摂りながら、ふと金銭的なことが頭に浮かぶ。
「まぁ、父様と母様に相談するしか…」
ないのか、と呟く前に箸がピタリと止まる。
(父様って誰?母様って誰?そういえば朝、姉上と呼んでいた男の子が…)
途端にズキリと頭が痛くなる。
何かを思い出す時には必ず頭痛がすることに、月奈自身が違和感を感じていた。
考えるのはやめよう。
頭を軽く振り、月奈は食事に戻った。