第7章 試練
子「お姉ちゃんもありがとう。かっこよかった!」
ギュゥと抱き着かれ、頬に唇が触れた。
子「俺、もっと強くなったら、お姉ちゃんをお嫁さんにする!」
「へ?…あ、ありがとう…あ、僕!もう夜出歩いちゃダメだよ!」
手を振って両親の元に走っていく少年に注意すると、「お姉ちゃんもね!」と返事が返ってきた。
「どうにか誤魔化せましたね…」
少年に手を振りながら、月奈はホッと息をついて木に深くよりかかる。ふと、頬に触れて苦笑いした。
(あれは末恐ろしい…まさか頬に接吻されるとは…)
千「すごい少年ですね…。俺は御礼を言われるようなことをしていないのですけれど…っうわ!」
苦笑した千寿郎の頭を勢いよく杏寿郎が撫でた。
煉「そんなことはないぞ!千寿郎もよくあの少年を守り通したな、兄として誇らしいぞ!」
実「あァ、二人ともよくやった。お館様への報告も俺がしておく、早く帰って休めよォ」
そう言って、鴉を呼んだ実弥はもう少し見回ってから帰ると言って隠とともに林道の闇に消えて行った。幾分回復した月奈は立ち上がり、随分遅くなっちゃったなぁと言いかけたと同時に思い出して叫んだ。
「あぁ!槇寿郎様!!千寿郎さん、槇寿郎様に連絡していません!どうしましょう、心配してらっしゃいますよね」
千「あぁ、風柱様が鴉を飛ばしてくださいましたので大丈夫ですよ。兄上も先ほど帰還命令を受けていたので、今から一緒に帰りますと父上に伝わっていますよ」
そういえば、と蝶屋敷まで向かった千寿郎が何故、実弥と短時間で戻ってきたのか不思議に思っていた。そして、杏寿郎も時を同じくして林道に居たのか。
千「この周辺で風柱様と兄上が任務に当たっていたようです。蝶屋敷に向かう途中で、風柱様とすれ違いまして。この容姿で兄上と勘違いされて声をかけて頂きました。そこで事情を話してこちらに戻ってきたのです。父上にはその際に鴉を飛ばして頂きました」
煉「うむ、不死川の鴉が飛んでいくのが見えたところで月奈が突っ込んできたから、さすがに驚いたぞ!」
「まさか杏寿郎様とは思っていなかったもので…鬼だったらと死を覚悟しました」