第7章 試練
実「お前なァ、むやみに傷作るなよォ」
「…え?実弥様がそれ言います?」
木に寄りかかって座っている月奈の顔色は、先ほどより体力が回復したからなのか血色が戻ってきた。受け答えもハッキリしている。
ほらよォ、と月奈の腕に包帯を巻き終わった実弥は頭を撫でる。
千「月奈さん、本当にありがとうございました。俺がいて、何もできなくて…」
「この子を抱えて助けを呼びに走ってくださいました、そのおかげでこうして皆無事です。こちらこそありがとうございました」
助けた少年は、月奈が無事であることが分かると泣き出してしまい、今は泣き疲れたのか月奈の膝に頭を乗せて眠っている。齢は六歳だと先ほど少年自身が教えてくれた。
隠「炎柱様、風柱様、その少年の両親がまもなく到着されますので、刀を隠して頂いてよろしいでしょうか」
煉「見つかったか。それは良かった!どのように説明したんだ?」
隠「野犬に襲われていたところを助けた、ということに」
実「野犬?子供が納得すんのかァ?」
子「んん…」
実弥がそう言った矢先に、少年は身じろぎをして目を覚ました。月奈を見て、お姉ちゃん大丈夫?と心配をしてくれる優しい少年に自然と笑顔が零れる。
「お姉ちゃんは大丈夫。もうすぐお父さんとお母さんが来てくれるよ」
子「ほんと!?…でも、さっきの怖いのはもういない?」
思い出したのか、怯えながら周囲をキョロキョロと見回す少年に、優しく声をかけると月奈を見つめ首を傾げる。
「怖いものはもういないよ、このお兄ちゃん達が退治してくれたの。…大きな野犬だったから、怖かったね」
子「野犬?犬だったの?」
月奈が頷くと、そっかぁと少年はすんなりと受け入れていた。暗い中での出来事だったので、ハッキリと鬼の姿を見たわけではなさそうだ。
月奈の両脇に立っている杏寿郎と実弥を見上げた少年はニコリと笑った。
子「お兄ちゃん達、助けてくれてありがとう!僕を抱えてくれたお兄ちゃんもありがとう!」
千寿郎にも目を合わせて御礼を言うと、隠に案内され到着した両親に名前を呼ばれた。