第7章 試練
ー本当は怖気づいて最終選別を諦めると言って欲しい。
そう思われていることは月奈は気付いていた。だけどこれだけは諦めることはできない。今は気付かないフリをして、鍛錬を積むのだ。
最終選別まで五日を切ったある日、月奈は蝶屋敷にいた。
ケガの治療日に合わせてカナヲやアオイと鬼ごっこのようなことをしている。遊びではなく、体力向上と反応速度の向上を目的として、ケガをした隊士達の機能回復訓練に取り入れられているれっきとした鍛錬だ。
ア「反応速度も体力も大分向上しているわね」
「え?そうですか!?そうだったら嬉しいなぁ」
今日はカナヲが任務に出ているので、アオイに相手をしてもらっていた。言われてみれば息が上がっていない。日々の鍛錬の成果が少しずつモノになってきていることが、ふとした時に分かるととても嬉しい。
し「ケガが完治したからといって、鍛錬のやり過ぎはいけませんよ。そろそろ最終選別に向けての調整が必要なのは分かりますが」
そもそも完治してない内から組手しているのもどうかと思いますが?と背後に立っているしのぶが月奈の肩に手を置く。
「すみません…」
笑顔のままサァッと青褪めて、振り向くことも出来ずに謝る。「まったく、仕方ない子です」と苦笑してしのぶは月奈の頭を撫でる。
?「しのぶちゃ~ん!」
スパァン!と道場の襖が開き、女の人が飛び込んでくる。
ピンク色に毛先が黄緑がかった三つ編み姿の女性は、しのぶに抱き着いて「痛いよ~!」と泣き始めた。
泣き始めたことにも驚いたが、なにより驚いたのは女性の隊服だった。
今の時代にはあるまじき、胸元を惜しげもなく開けており、止まっているボタンは首元とお腹部分のみ。極めつけは丈が恐ろしく短いスカートだ。
(…え?なんでこの人だけこんな隊服なの!?大丈夫なの?)