第7章 試練
「自由にやれって天元様からは言われたけれど、どうすればいいか分からなくて模索中です。それに、やはり対女性と対男性では攻撃の重さが違っているので、受け流しても体力が取られていく気がします」
煉「うむ!攻撃を受け流すよりも先に避けることを重視したほうが良いかもしれんな!鬼の攻撃を受け流し続けるなんて、俺でもやりたくないな!」
槇「確かにな。避ける逃げる、これを徹底するべきだな。会敵して逃げられない場合も同様に、攻撃で打ち勝つことは今の月奈には無理だ」
(あれ、こっち見てたの?というか、今もこっちの話聞いているの?)
嘘でしょ、と槇寿郎と杏寿郎を見ると、二人は竹刀で撃ち合いをしながらこちらに話しかけてきている。
千「それにしても、身のこなしが軽いのは女性だからでしょうか。俺としては一撃の重さが軽くても、素早く懐に入られることが嫌でした。スキをつくのが上手ですね」
自分の鍛錬が甘いだけでしょうか?と千寿郎は少し恥ずかしそうに微笑んだ。
「その割には涼しい顔で受け流されましたがね」
口を尖らせて不満気に呟く月奈に、千寿郎は慌てて謝る。座ったままの月奈の頭にポンと手を置かれ、見上げると杏寿郎が苦笑していた。
煉「千寿郎は幼い頃から鍛錬を毎日続けているからな!その千寿郎相手にあれだけの攻撃を仕掛けられるのだ、君も十分成長しているということだな!」
槇「手甲鈎といったか?先ほどの武器を着けていれば、中々に脅威だな」
(この三人、本当に遺伝子強いなぁ)
三人が目の前で、真面目に自分の体術について話している光景を見ながら月奈は違う事を考えていた。
鍛え抜かれた体は、道着を身に着けていても容易に分かる。
(鍛錬で汗ばんだ肌と上気した顔、これは色気がすごい。千寿郎さんは自分の相手をしてたから汗ひとつかいていないけど)
ハッと、自分の世界から現実に戻った月奈は頬をベシッと叩く。
千「月奈さん!?」
煉「よもや!何をしている!?」
「いえ…ちょっと考え事をしていました。申し訳ありません」
最終選別まで残された期間は3週間、気合いを入れて鍛錬しなければ。余計な事は考えないように、強くなることだけを考えよう。
改めて気を引き締めた月奈は、もう一回と千寿郎に組手を申し込んだのだった。