第7章 焼芋
ー…
居間で女子会状態となってから、
一刻程が経ち、
陽が沈みかけていた。
…!
あら、もう日が暮れるようです。
楽しい時間は、あっという間ですね。
外を見て、胡蝶さんが言う。
…本当だ、もう日が暮れちゃう…。
胡蝶さん、こんな遅くなってしまって…
帰りは大丈夫でしょうか?
胡蝶はにっこり笑って、
ええ。近くの宿でも取って、
明日の朝帰るようにしますから。
甘露寺さんも一緒にどうですか?
やだ!皆でお泊まりなんて、嬉しいわ!
ぜひ、お邪魔させてもらうわ!
…いいなぁ…。
あっ…!
心の中で言ったつもりが、
うっかり口に出してしまっていた。
美玖さんも、
一緒に宿に泊まられますか?
胡蝶は、そんな美玖を気遣い誘ってくれた。
えっと…。
美玖がどうしようかと悩んでいると、
居間の戸が開くと共に、快活な声が響く。
いいじゃないか!
美玖、遠慮せず行ってくるといい!
!…師範!遅かったですね?
ああ、ちょっとな…。
胡蝶!悪いが、
美玖も連れて行ってくれるか?
私は構いませんけど、いいのですか?
ああ!
たまには息抜きも必要だろう!
もう日も暮れる事だし、
宿まで俺が送って行こう!!
…師範!ありがとうございますっ!!
手早く荷物をまとめて、
皆で煉獄家からさほど遠くない宿へ向かった。
宿へ着き、師範を見送ると、
また、部屋で女子会が始まった。
美玖達の部屋からは
夜遅くなっても笑い声が絶えず漏れていて、
皆が寝静まったのは
日付が変わる頃であった。
また来年も…
みんなで焼き芋会、できるといいな。
薄れゆく意識の中、
美玖はそんな事を思い眠りについた。
ー…
ちょうど美玖達が眠りについた頃、
杏寿郎は部屋で一人、酒を煽っていた。
美玖を嫁に出すつもりだ。
先程の槇寿郎の言葉を思い出す。
ー…
俺は、どうしたいんだろうか。
なかなか答えを見つけ出せないまま、
酒ばかりが進んでいく。
ただ一つ分かるのは、
父上の言葉に、
頭が真っ白になった。
それは一体何故なのか…
答えは出ないまま、
杏寿郎は意識を手放した。