第7章 焼芋
季節はすっかり冬を迎え、
柔らかな陽射しと
青く澄んだ空…。
時折吹く、冷たい風が、
季節が移り変わった事を実感させる。
よし!
支度をするとしよう!
杏寿郎は、
そう言うと素早く着替え、
庭へ大量の落ち葉と、
山盛りのさつまいもを用意した。
そう、さつまいもの季節である。
なぜ、こんなにも大量に準備しているかというと、
煉獄家の大好物である事は
言わずと知れた事だが、
今日は客人を招いていたからだ。
数ヶ月前、
自身の継子である美玖は
10日ほど蝶屋敷で過ごしていた。
杏寿郎のその、
あまりの過保護っぷりに
蝶屋敷へと出て行かれてしまった時の事を思い返す。
あれから二月程経つ。
杏寿郎は、
美玖に一人での任務が来ても
しっかりと送り出していた。
心配ではないと言えば
それは完全に嘘になるが、
美玖の気持ちを大事にしたいという、
彼なりの葛藤の末の事だった。
美玖はその後も、
鬼を何体も撃破しており、
隊内でもその実力は知れていた。
階級の低い者などは、
美玖がいると、
柱と共に在るような安心感を得る程だ。
名実ともに炎柱の継子として
堂々たる活躍ぶりだ。
話は戻るが、
蝶屋敷から煉獄家に帰る際に、
胡蝶に礼をする約束をしていた。
そこで、蝶屋敷の皆を
煉獄家の焼き芋会に招待したという訳だ。
師範っ!
おはようございますっ!
兄上!おはようございます!
焼き芋の準備をしていると、
まだ寝間着姿のまま、
美玖と千寿郎が駆け寄ってくる。
はっはっはっ!
お前たち…まだ寝間着ではないか!
外は寒い!
来たければ、先に着替えてくるといい!
美玖と千寿郎は
互いの姿を確認し、
廊下をパタパタと走って行った。
まったく、
やはり、まだまだ子どもだな。
走り去る二人を見送ると、
杏寿郎は準備を進めるのだった。