第4章 山中
パチッ
美玖は昨日とは打って変わり、
夜も空けきらぬ内から目を覚ました。
…よしっ
今日から、胡蝶さんのところで、
修行…頑張るぞ…!
師範に、本当の意味で、
ちゃんと認めて頂けるように。
心の底から、
送り出してもらえるように…!
隊服に着替え、
師範の羽織りを身につける。
昨日と同じように、
髪を高い位置で束ね、
蝶の髪飾りをあしらう。
よし!完璧!
そのまま布団を畳むと、
台所へと向かった。
ー…
台所へ着くと、
アオイが朝餉の支度をしていた。
アオイちゃん、おはよう!
何かお手伝いできる事ある?
美玖!おはよう!
ありがとう。
そしたら、ネギを切ってもらえる?
いいよ!
お邪魔しまーす。
アオイの隣に並び、
お味噌汁の具を切る。
アオイちゃんはすごいね。
料理も洗濯も手際が良くて!
…私は、これくらいしか出来ないから…。
アオイは、
鬼殺隊に入ったものの、
鬼が怖くて任務に出られなくなったのだ。
今は、胡蝶さんの屋敷で、
怪我人のお世話などをして過ごしている。
…アオイちゃん、見て。
美玖はそう言うと、
自身の手で刻んだネギをアオイの前に置く。
今ね、まじめに切ってたんだけど、
全部、切れてなかったの…。
美玖の切ったネギは、
ちょうど外側一枚が切れておらず、
ただ、切れ込みが入っているだけだった。
…ぶっ!
我慢できず、アオイが吹き出す。
そのまま二人で大笑いしてしまう。
アオイちゃん!
こんな事…なんて言わないで?
アオイちゃんの言うこんな事が
できない女子が隣にいるんだから!
それに、
怪我をした隊士達にとって、
アオイちゃん達は無くてはならない存在だよ。
私だって、とってもお世話になったんだし。
美玖は一息で言い終えると、
ネギをもう一度切り直す。
アオイは、先程より柔らかい表情で、
…うん。
とだけ呟いたのだった。