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大正鬼殺譚 〜炎柱の継子〜

第1章 継子





…っ

美玖!!


美玖は、
ほぼ全身に傷を負わされ、
脱力した状態であった。


血を…流し過ぎている…。


俺の声にも、まるで反応がない。

このままでは、まずい。


即座に抱き抱え、
蝶屋敷へと急いだ。




ー…バンッ

戸を蹴り飛ばし、
奥へと駆けた。


胡蝶!胡蝶!!

重症者だ!
すぐに見てくれ…!!


煉獄さん?
一体誰が……!

…!美玖さん?一体何が…?


十二鬼月と戦ったのだ!
撃破したが、そのまま倒れた!

頼む!助けてやってくれ!!


…わかりました。
出来る限り、手はつくしましょう。

煉獄さんは出ていて下さい。


胡蝶は、直様、手術を開始した。



…頼む…美玖…。

死ぬな!
…どうか、生きていてくれ…!


ただただ、祈るしかない己が不甲斐ない。

もっと早く、駆けつけていれば…。




不意に、父親の言葉が
頭の奥から聞こえてくる…。


お前など、大したものにはなれん。


俺は、たとえ
何十、何百の命を救ったとしても

自身の大切な者一つ、
守る事ができないのか…?


美玖…!!



手術は、困難を極めた。

血を流し過ぎていた為だ。


胡蝶の話によれば
まだ息があったのが不思議な位だ、と。


体の傷は全て縫ったが、


目を覚ますかは、分からない…とも。



一月、二月、

美玖は眠ったままであった。


任務の傍ら、
時間を見つけては

俺は美玖の元を訪れた。


その日の任務や、

千寿郎の事、

外の天気だとか、

夕餉の話や、


とにかく、色々と語りかけ続けた。


だが、
美玖からの返事はない。



怖かった。

時々、心の臓が止まってやしないかと、

心配で堪らなくなった。



美玖が眠りについて、
三月が経とうとしていた。

春の時期はとうに過ぎ去り、
川辺ではホタルが見られるようになった。

季節は既に夏になっていた。



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