第1章 誰でもエルヴィンSS12月
空が白ばみ始める前のこの時間。
いつもと同じように彼の手中をすり抜け頭を撫でる。両脚は彼の足に巻き取られていて動かせない。自由にさせてくれている様でしっかりと縛っている・・それは、会議の席でもプライベートでも同様だ。
――永遠に夜明けなんて来なければいいのに――
何度そう思っただろうか。朝がくると直ぐに日没はやってくる。そうなると彼は旅立ってしまう。最初は壁外に行く度に彼に隠れて泣いていた。そしていつしか慣れたように見せかけて自分を騙した。
――お前はここに残れ――
リヴァイ兵長との会話をドア越しに聞いてしまったからか、歴史に残ると言われている「ウォールマリア奪還作戦」のせいか。不安で押しつぶされそうな心臓をエルヴィンに近づけて温もりを感じた。なぜ憲兵団へ辞令がでたのか・・1つの考えたくもない答えに辿り着きかけ、全てを忘れるように眠りへとついた。
――俺は酷い事を君にしている。生活に困らないようにと理由をつけて、指輪で君を縛ろうとしているのだから――
聞こえた声が夢なのか現実なのか、包まれた温もりの中ではどちらでも良かった。
―Fin—