第5章 消息盈虚
いつも、フラッと寄ってくれていたから
何とも思わなかった。
…私から、会いに行った事、ないなぁ。
家すら、知らない。
連絡の、取り方も。
こんなんで私、どうするつもりでいたんだろう…
私が知ってるのは、顔と、名前だけ…?
私は布団に横になり
そんな事を考えていた。
今までは、長くて1週間程度。
それがもう、1か月だ。
そろそろ…忘れてしまいそう。
あの人の、あったかくて大きな手も
優しい、声も。
幻を追いかけるだけしかできなくて、私はつらい。
でも…もう、どうでもよくなったりしない。
今の私と、昔の私との絶対的な違いは、
大切に思う人が、たくさんいるという事だ。
みんな優しい。
だから、大丈夫。
毎日楽しいよ。
お店には今日も、たくさんのお客さんが来てくれた。
わざわざ遠くから、
足を運んでくれる人もいるんだよ?
蜜璃ちゃんはちょくちょく顔を出してくれるし、
いろんな話しを聞かせてくれる。
なんて幸せなんだろうと思うよ。
私を気にかけてくれる人が
たくさん、できた。
でも、
どんなに楽しくても、どんなに幸せでもね、
それでも、そばに、
あなたがいてくれたらと、思ってしまうんだ。
失礼なヤツだよね。