第25章 時間を超えて。
私の身体を押さえつける両手が…
私の事を見つめる、綺麗な両眼が…
「落ち着いたか?大丈夫かよ」
「……」
「何で泣いてんの。…おい。
ほら落ちるだろ、もっとこっち来い」
いつもの、ベッド…
落ちそうな所に移動していた私を
スルっと抱き寄せてくれた。
「…夢でも見たか?」
「ゆめ……」
……
「ゆめじゃ、なかった…」
「…ん?」
「私、あそこにいたの…」
呆然と言う私に、
天元は背中をさすりながら
「そうか、わかったよ」
ひとつも否定せずに慰めてくれる。
認めてくれて嬉しかった…
でも、アレは夢だったよと、
言ってほしかった…
「泣き虫」
フッと笑った目が、ひどく優しくて
私は気持ちが溢れ出す。
「すき…」
「…ん?」
何事かと驚いた天元が
私の頭上で首を傾げたのがわかった。
「…天元?」
「んー」
胸元にいる私と目を合わせ
髪を撫でてくれる左手を取って、
両手でぎゅっと握りしめる。
指の1本ずつを握って確かめる私を
不思議そうに眺めていた。
「……手、なんかあんのか?」
「…目…」
「…目?」
「ケガ、してないねぇ…」
「ケガ?して、ねぇよ?」
した事ねぇよな?、と続け
しきりに首を傾げる天元が愛しくて、
力いっぱい抱きついてしまう。
「天元…だいすき」
「…おぉ」
「だいすき…よかった…」
ものすごい勢いで泣き出した私。
わけもわからないだろうに、
何も聞かずに強く抱きしめてくれる天元がありがたい。
「すき…天元すきー」
「そうかそうか、よかったよ」
「だい、すき…」
ぎゅうっと抱きしめると
「あぁ、俺も」
それ以上の力で抱きしめ返され
「…好き、」
と言うと
「好きだよ」
とちゃんと言葉にしてくれる。
気持ちを伝えて満足した私は
「だっこして…?」
それでも止まれそうもなかった。
「…だっこ…してんだろ」
「もっと」
「もっとって…これ以上力入れたらお前潰す」
「ちがう…!」
「したいのかよ」
うん、という返事の代わりに
ちゅ、っとキスをした。
「優しくしような…」
お前泣いてるし。
そんな呟きをこの耳でしっかり聞きながら
私は幸せを噛み締める。
その幸せにしがみつきながら
あの人も素敵だったけど
やっぱり私にはこの人しかいないと思った。
☆彡