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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜





声を掛けずとも振り返る影。

諦めたような笑顔を浮かべ、

「おはよ…。早いな」

ぽつりと言った。
だから、

「おはよ。…遅ぇくらいだ」

ぽつりと返す。

「そうだね…」

「なぜ俺が来たのか、
わかってるような口ぶりだな」

アシルはふっと
自嘲するように息をついた。

「そりゃ、…天元が気づかないワケないからな」

気づいてもらいたかった、
とでも言っているような目だ。
あーもう…

「お前どうしてぇの」

「どう…?」

悩ましげに目を伏せるアシル…を見ていて
ある事を思い出した。

「お前さぁ、ネズミ穴使うなよ」

「ネズミ…?あぁ、」

遠い目をしてクスリと笑った。

「あんな昔の事、よく覚えてたな」

「天元と一緒にしたことは全部覚えてる。
特にあの時は、俺のためだったろ?」

「んー…そうだったか」

「とぼけちゃってさ。
俺が泣いたからだろ。ちゃんと覚えてる」

俺の顔を真っ直ぐにみつめてアシルが言った。

覚えてんのかよ。
あん時お前まだ3歳だぞ。
我が弟ながら恐ろしい男だ。

「可愛かったよなぁ…」

後宮にいる母親に会いたいと泣いたアシル。
あの頃の親父は今とは違って厳格な王様だった。
…歳のせいか、あんな柔らかくなっちまったが。
あの時は
俺らの話なんか聞いちゃくれなかった。

後宮の門番は、
王の許可がなきゃ入れねぇの一点張りだし、
アテになるのは自分しかいねぇと思った俺は
建物のあちこちを嗅ぎ回った。
そのうち、後宮の裏手、
人目につかないところに
通路があるのを探し当てたのだ。
今はもう使われなくなった、
使用人のための通路。

鍵をぶっ壊して、中を窺ったが
シンとしていて誰が見張っているでもなかった。
小さいアシルの手を引いて、
迷路のような後宮の中を
こいつの母親を探して歩き回ったっけ。

「懐かしいな…」

「うん…」

「そのいい思い出をぶち壊すなよ。
何回使った?」

「……2回」

「ウソだろお前!
2回も行ったの?睦に会いに⁉︎」

何をしてくれてんの?

「会いたくて行ったのは1回だけ。
最初は、そういうつもりじゃなかったから…」

「正気かお前」

俺にとって『理由』なんて無意味だ。
あの場で睦に会っていたという事実が全て。

あんな通路、もう埋めてやる。

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