第24章 スルタンコラボ続き 〜睡蓮の恋〜
そう言い置いて天元は出かけて行った。
私は未だベッドの中。
…どこへ、出掛けて行ったんだろう。
今日はお仕事…?それとも……
そんなことをボケーっと考えて
綺麗な装飾が施された天井を眺めていた。
ベッドの縁から頭だけを落とし、
シンとした部屋の中を見渡す。
昨夜は、あのソファに天元と一緒に寝転んだ。
それからこのベッドで寝た。
今は閉まっている、あの大きな窓の向こうで
一緒にごはんを食べたこともある。
それから、
バルコニーから夜景を眺めたりしたの。
この部屋は、怖い場所なんかじゃない。
天元の影がそこかしこに残る、
居心地のいい場所なんだ。
そのはずなの。
でも、…多分、
私は天元とは違う、
誰かのことも気になっている。
それは、天元も気がついているに違いない。
でなきゃ、…
あんなおかしな抱き方をするわけがない。
私が意識を失った後も、
何度も揺り起こされた。
その度にわざと焦らすような、
でもうっとりとするような行為に耽って…
……思い出すと、だめだ。
おかしくなってしまいそう。
だって…今ここに彼はいないのに…
熱を再燃させても慰めてはもらえないのだから。
それにしても…怠い。
疲れたし…眠い……もうすぐ、
ジャナが朝食の支度をしにくる…
服を…着なくちゃ…
あぁ頭も…このままじゃ血が上る…
私は何とか、身体をごろりと返して
頭をベッドに乗せる事に成功した。
でも…ちょっと服は着られそうもない…
澄んだ空気。
辺りはまだ、薄青いもやがかかっている。
いつもは賑やかな市場も、
まだシンと静まり返っていて
不思議な感じがする。
俺はネズミ、ことアシルに会いに行く所。
この時間なら邪魔も入らずに
ゆっくり話しができるはず。
可愛い睦との、
甘い朝をフイにしてのこの状況…。
俺としてはあり得ねぇが、
そうしてでも何とかしなけりゃならないのだ。
…
黙って見過ごせない所まで来た。
明確な目的をもって、
アシルは睦に会いに来ていたのだから。
睦の気持ちを揺るがす程の、
お前のその強い想いは、
俺が摘んどかねぇと気が済まないのよ。
鳥の囀りが聞こえる、
草木に覆われた空間。
店の裏手の、ちょっとした空き地。
そこに、俺の弟はひとり佇んでいた。