第23章 こいびとおにいちゃんズ。の彼女
「お前が好きなんだよ。だから…」
なんの前触れもなく唇を重ねる。
「ちょっ…!」
まったく話を聞かないこの男が憎らしい。
憎らしくて肩をぺしっと叩いたその手を
ぎゅっと掴まれた。
そのまま指を開かれて
力を入れて握られる。
背中に回された腕が更に引き寄せて
「…っ」
そのおかげで深まる口づけ。
あぁもう…
もうこうなったらさ、
私どうにもできないじゃない。
拒む事ができないから、
やめてねって言ったのに。
わからないかな、この人は。
私の悩みは、
天元の好きなようにされるのが好きな事なのに。
だからやめて欲しいの。
私が止めなくちゃ
この人はほぼやめたりしないのに、
こうなってしまうと
私ももうやめたくなくなってしまうから…
結果、終わらない無限地獄に陥るのだ。
いつもはやるべき事があるから
仕方なく抵抗するけれど、
今日はお客様がみえるので
やるべき仕事は終わらせてある。
ということは、
抵抗する理由すらないというわけ。
キツく抱きしめようが
互いの舌を絡め合わせようが
珍しくなんの抵抗も見せない私に
違和感を覚えたのか、
「…いいのか?」
唇をほんのちょっぴり離して問う。
「何が…?」
「続けて」
そう。
私はいつも、形式上抵抗してみせるものね。
「嫌。…って言ったらやめてくれるの?」
「…やめ、ねぇ」
やっぱり。
「じゃあどうして訊くの」
「何となく…。
お前いつもと違うから気になって」
いつもと違う…か。
確かに違う。
でもこれが本当の私だって知ったら
この人はどう思うだろう。
…ちょっと恐ろしくて、それは言えないかも。
1度口から出てしまった言葉は
もう回収できない。
取り返しがつかないのだ。
口は災いの元、
という言葉の通り。
だから、
「今日は、そういう気分なの。
たまには…いい、でしょう?」
今日だけ。
今だけ、ということにしてしまおう。
これから先、私はまた抵抗する事だろう。
まぁ、照れてしまうのは
紛れもなく本当の事だし。
「そんな事もあるのか…?大歓迎だな。
毎日でも構わないぞ」
そう言って、再び唇を堪能する。
優しくくすぐるような口づけをされ
その唇を通して惜しみない愛が伝わって来る。