第3章 意路不倒
うつ伏せに頬杖をついた格好で
私はまたボーッとする。
今日、2人で行った、あの廃墟。
あそこにいた時も、何だかおかしかった。
私が見る度に、泣きそうな目をしていた。
どうしたと言うのだろう…。
——そういえば。
やけに、知ったような話し方をしていた。
『せっかく来た懐かしい場所だろ』
…そう、言っていた。
懐かしい場所だなんて、わかるものだろうか。
そんな態度、とったかな。
でも『昔より草はひでぇが…』と言った。
昔を知っている、と、言っているようなものだ。
私は、無意識に、体を起こしていた。
『その木はまだ元気だな』とも言った。
…マダ?
昔は私が高い所が平気だった事も知っていた。
高い所が平気かどうかなんて話し、
宇髄さんとは間違いなくしていない。
宇髄さん、
わざと、こんなヒントを落として行ったの?
私たち、知り合っていたの?
私は居ても立っても居られなくなって、
夜着の上に着物を着ると、家を飛び出した。
おじちゃんたちなら、
あるいは何か知っているかと思ったのだ。
早足で歩きながら、私は考える。
…色々、あるなぁ。
前から、たびたびおかしく思う所はあった。
あの、犬に追いかけられた夜。
まったく人通りのなかったあの場所で
ちょうどよく助けてくれた事。
私の家の方角を…場所まで知っていた事。
河原にいたらそこにやってくるし…。
私の行動範囲を、知っていた証拠だ。
それに、目。
あの…目だ。
私は、歩みを止めた。
思い、起こせば。
全部つながっていたんだ。