第2章 比翼連理
化けただけだ。
中身はいつもの睦だぞ。
自分に繰り返し言い聞かす。
でも。
でも、外見がちょっと違うってだけで、
なんだこの破壊力は。
ちくしょう。
いや、落ち着け。
いつもの睦、中身は睦。
ちょっとボケてて、
平気で可愛い事を言ってのけるんだ。
自分の気持ちは素直に告げられる睦。
…ちょっと待て。
妖美な外見と可愛い態度…って、最高じゃね?
止まんねぇヤツじゃねぇの?
「ダメだ‼︎」
いきなり叫んだ俺に驚いて、飛び退く睦は
「ダメ?」
不思議そうに訊く。
「邪念が…!」
「はい?」
「いい!行くぞ!」
こんなとこに2人っきりでいるから
追い詰められんだ!
外だ外‼︎
俺は睦の手を取り引っ張り上げると
そのまま外へ出た。
建物へ向かって一礼すると、
賑やかな通りへと足を向けた。
睦の手を引いて
もと来た道をのんびり歩いた。
睦は俺の少し後ろを歩いている。
通りの店や、露店なんかを、
目を輝かせて眺めている。
行き先は、手を引く俺に任せっきり。
店に並ぶ小物たちに心を奪われているお前にはわからないだろう睦?
すれ違う人々が、
みんなお前を振り返っていく事。
そんなお前を連れて歩く優越感。
周りの人間たちが、
俺らを見て、何を囁くのか。
何も気づかずにいるお前が愛しいよ。
人の事は考えるのに、
自分には頓着のない所も、
俺にだけ甘える所も、
あますことなく、全てが愛しい。
美しく着飾った姿なんて、
誰にも見せたくないと思っていた。
なのに、そんなお前を連れて歩くのは
こんなに幸せだ。
それは何よりお前が、幸せそうだから。
「宇髄さん、楽しいですね」
ころころ笑う睦が可愛くて。
俺はお前が眩しくて仕方ない。
ふと、睦は
脇道の奥にある廃墟に目をやった。
…あぁ。
「あそこは…」