第20章 旱天慈雨
志乃さんの話によれば、睦の故郷は
ここから遠く離れた場所のはず。
それが、なぜこんな、
2つ先の町で出会うのか。
姉妹といえど、それぞれ事情はあるだろう。
違う町で暮らしていても不思議はない。
でも、俺らと出会う事はないと思う…。
それが睦に課せられた試練だというのなら
俺がこの手で断ち切ってやるだけの話。
睦の言う通り、
きっと顔は瓜二つなのだろう。
ツラい記憶を呼び起こすほどに。
「睦…」
名を呼ぶと、にこっと笑う。
この笑顔を守りたいのだ。
守ると誓ったのだから。
真実なんて何の意味もない。
こいつが笑わないのなら
まったく、意味をなさない。
俺が胸にしまっておいて
睦がそれに遭遇しねぇように
気を配っていればいいだけのこと。
「そうやって、俺の横で笑ってろ」
「…なんだか、…守られてる感…?」
小首を傾げ、
ぱちくりと目を見開く睦。
もう言葉もない俺は
守ってやるよと言う代わりに
強く睦を抱きしめた。
☆彡