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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第20章 旱天慈雨


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日常の中に、ふと非日常を求めてしまい、
どうしても逃避したい俺と、
日常の中にこそ幸せを見出して
それを遂行したい睦。

晴れて夫婦という間柄になり、
その生活にもそろそろ慣れて来た頃。
きちっと型にはまった毎日を
抜け出したっていいだろうと、
今日という今日は
全ての家事を放棄させ
粋な着物に着替えさせてから
何とか揃って遠出を決め込んだ。

「…ねぇ天元?どこまで行くの?
随分と遠くまで来たねぇ」

やっと俺の事を名前で呼ぶようになった。
そんなことでこっそり感動している俺。

それはそうと、…
睦がそう言うのも当たり前。
もう2つ先の町まで来ているのだ。

「疲れたか?」

「ううん、疲れないよ」

にっこり笑っている所を見ると
本当に疲れてはいないようだった。

「楽しい方が上回ってる。この町は大きいね」

きょろきょろと辺りを見渡しながら
俺に手を引かれて歩く睦は、
すべてを俺に委ねっぱなしで
どこをどう歩いて来たのかなんて
わかっちゃいないだろう。

「そうだな。人も多い。ぶつかんなよ?」

「はぁい…。あ、あのお店見てみたいな」

指差したのは
やっぱりというべきか、
小物の店だった。
俺はつい笑ってしまう。

「相変わらずだな。んじゃ行ってみるか」

「ありがと」

空いた方の手を
俺の腕にきゅっと絡めてしがみついて来た…
往来でそんな事をするとは珍しい。
よっぽど嬉しかったと見える。

「おうよ。何かいいモンがあったらいいなぁ?」

「それはどうかしら?」

いたずらっぽく笑う睦には
わかっているのだ。
俺がこいつに何かを買い与えたいのと、
自分はそれに見合わず
欲しいものなど滅多に見つからないという事を。

「あー買ってやりてぇなー」

「やめてよ、そうやって圧力かけるの」

憎らしげに俺の腕をつねる。
可愛い仕草をされると
愛しさは余計につのる。

「こんなこと、滅多にねぇのになぁ。
もったいねぇ女だよお前は」

「んー…じゃあ、今日の記念に、
頑張って何かを選ぼうかなぁ…」

睦がとうとう折れた。

それにしても、欲しいものを
『頑張って』選ぶあたり、もう間違っている。



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