• テキストサイズ

【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第19章 思い出 ☆彡





「おぉ、そりゃ良かったな」

数週間前に店にも立てねぇと困っていた。

「じゃ店も再開か」

「はい、今日は元気に働いていました」

心から嬉しそうに俺を見上げた。
それから、と続けた睦。

「おじちゃんとこの帰りに可愛い男の子がいて…」

「男の子?」

「はい。私、迷子かと思って
少しの間お母さんを探していたんですけど…。
でもその子、お母さんはいないって言うんです。
1人で遊んでいたって言うから
私、ちょっとだけ相手してあげてたんです」

「…ほぅ」

話の先が見えて来ねぇ…。

「そうしたらお父さんがお迎えに来て…。
それがね、驚くほどきれいなお父さんで、
役者さんか何かかなぁなんて…。
よく考えたら、その男の子も可愛いし、
そっくりなんですよ」

…………

「お母さんがいなくて淋しかったのか
その子、お姉ちゃんも一緒に帰ろうなんて
言ってくれて…」

…言って、クレテ?

「小さな子に懐かれるのって嬉しいです。
本当に慕ってくれるのがわかるから…」

頬を上気させて語る睦に
えもいわれぬ感情が湧き上がった。

「それを…」

「…え?」

「それを俺に聞かせて、どうしろって?」

睦はこれでもかと目を見開いて
俺を見上げる。

やべぇ、と思った時はもう遅かった。
遅いのなら、
もうどうにでもなれとヤケを起こす。
でも、

「自分が、
お母さんになってあげようかとでも思ったか」

睦の表情が凍りついたのを見て
ひどく胸が痛んだ。

こんなの間違ってる
そう思うのに、
口だけは別の人格を持ったようだった。

「…宇髄、さん?」

俺にも笑ってほしかったのか、
睦はごまかすような笑みを浮かべる。

…そうだよなぁ。
こんなふうに言われるとは思いもしなかったろう。
俺もこんなこというつもりは
カケラもなかった。
大切な女に優しくなれねぇ俺に
お前を愛する資格があるとは思えない…。

これ以上口を開けば、
絶対ぇに余計な事を言ってしまう。
そう思って口をつぐむと
それを怒ったと勘違いした睦が
スッと身を引き
無言で立ち上がった。

その顔に感情は無く
怒っている、若しくは悲しんでいる事は明白。


/ 2219ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp