第19章 思い出 ☆彡
「泣くのかよ…。
なぁ睦。お前はどうなりたかった?
俺から、離れたかったのか?」
お許しが出ない以上、
抱きしめることも叶わない俺は
手のやり場を無くして強く拳を握った。
「…離れたくありません…」
あーあ、さっきまでの勢いはどこへやら…。
「じゃどうして欲しい」
「……」
こいつは自分の願いを口にするのが苦手。
言ったら悪いと思っているのだ。
…その昔、そんな育てられ方をしたのだろう。
「俺にはホントのこと言っていい。
お前のいいようにしてやるよ」
「……そばに…」
「…うん」
不安に揺れる瞳。
言い淀む睦を辛抱強く待った。
睦の言葉で聞きたかった。
こいつがちゃんと、
俺に甘えられるようにしたかった。
言葉は出ないのに、
涙は後から溢れ出てきて、
弱った俺は、心とは裏腹に微笑んでしまう。
それを見て安心したのか、
睦はフッと肩から力を抜いた。
俺の微笑みは図らずも好転に向かったようだ。
「…そばに、いさせてほしいです」
押し出すように、
悪い事でもするように…
俺の目から隠れるように、
それでも
やっと曝した睦の本音。
「いてやるよ。お前が望むなら、
イヤってほど、そばにいてやるから」
再び涙をこぼす睦を
この手が抱きしめたがって仕方ない。
「睦もういいだろ?我慢できねぇ、」
言い終わらないうちに、
睦の方からしがみついて来て、
俺はそれを力いっぱい抱きしめた。
あぁ、やっと触れられた。
我慢に我慢を重ねた俺はもう限界。
イヤがろうが逃げようが、
夜通し睦に絡みついて
俺の本気の具合を身体中に植え付けてやった。
⌘
あの時みたいに、
俺の気持ちを曝すしかないのだ。
俺たちは何度も同じことを繰り返すよなぁ?
それでも俺は、全然イヤにならねぇんだが、
お前はどうだ睦…?
「…ちゃんと話そうぜ?
こっち向いてくれ」
声を落とすと、多少は俺の本気が伝わったのか
話を聞く気になったようだった。
「俺に悪気がねぇ事はわかってるだろ?
いつもの悪いクセだ。
睦が可愛いから…」