第19章 思い出 ☆彡
「何勝手なこと言ってるんですか!」
「なんとでも言え。
ばかだな、俺はお前しか見てねぇのに…」
強く長い腕が私の身体に絡みつく。
思い切り背中を反らして肩を押しやるも
まったく効果なし。
非力な自分が恨めしい。
「宇髄さん!離して下さいよ、
こんなの…いや!」
「まったく手が焼けるねぇ。
いやだなんて言えねぇようにしてやるよ…」
言いながら唇を寄せる。
私の話なんて聞いてもらえないようだ。
「手が焼ける女なんて面倒でしょう?なら…」
「相手が睦なら面倒じゃねぇ。
むしろ買って出てやるよ。俺はお前が大好きなの。
んで、お前も俺を大好きなんだよ」
優しい声と共に降ってきた口づけ。
力いっぱい抵抗していたはずなのに、
その力さえ溶かされてしまって
後はもう、
自分でもどうにも出来ないほど溺れて行った。
やめてほしいなんて思っても、ただ思うだけ。
「……こら睦、逃げんな…」
私の目の前に座る彼の足を、
折り畳んだ自分の足を使ってぐっと押すと
伸びた膝の分だけ私の身体が下がって行く。
少しずつ離れようとする私を窘め、
捕まえようと伸ばされた手を躱して
うまく逃げたと思ったのに、背中には壁。
追い詰められ逃げ場を失った私は、
堪えきれず…
「…泣くなよ。お前が俺のこと好きでいる間は
絶対ぇに離さねぇぞ」
ちゅ、と口づけを落として、
「俺がいつ、他の女とお前を比べたんだよ…、
…あぁ、さっきの…か…。おい、アレは」
ほっぺたを伝う涙を拭ってくれる。
「あーお前は!しょうがねぇなぁホント。
あんなの、
睦が可愛いって言っただけの事じゃねぇか。
他のどいつもメじゃねぇんだよ。わかるかよ?
あぁどう言えばいいんだ、参ったな…」
がしがしと頭を掻いて
うまい伝え方を模索しているようだった。
「特定の誰かを持ち出したワケじゃねぇぞ。
勘違いすんなよ、」
「…そんなの、わかんない…」
そう言ってまた涙を流す泣き虫で弱虫の私を
優しく抱きしめてくれる。
「俺がお前しか見てねぇのわかってるくせに。
ずっと睦しか見て来なかったんだぞ、
その俺が、お前以外知ってるワケねぇだろ?」
「…私、だけ…?」