第19章 思い出 ☆彡
ある日の午後。
季節は初冬。
手足の冷えが気になる今日この頃…。
私はひと仕事終え、
天元にお茶を出しに行く所。
途中、
小さな影が私の元に駆け寄り抱きついて来た。
おっと……
その振動でお茶をこぼしそうになり、
私は何とかバランスを取った。
「睦月…?危ないよ、どうしたの?」
私が声をかけると余計に抱きついてきて
……泣いているようだ。
私はお盆を片手に持ち直し
睦月の頭を撫でる。
「…お話し、しよっか。おいで?」
申し訳ないがお茶は後回しにして、
自分の部屋へと睦月を連れて行く事にした。
卓の上にお盆を置いて、
俯いている睦月を膝の上に抱いた。
「睦月、今まで何してたの?」
「ねぇねとあそんでた」
「そうなの。何して?」
出来るだけ核心に触れないよう
当たり障りのない話題を振る。
少し気を紛らわせる為だ。
「さいしょはお庭でかけっこしたよ。
そのあとねぇねのおへやで…あそんでたのに…」
ぱっちりお目々にみるみる溜まっていく涙。
あぁああ…
「泣かないのよ?楽しく遊んでいたんでしょう?」
うん、と大きく頷いて
「でもねぇねをおこらせちゃったの…」
「悪い事しちゃったの…?」
この睦月が?
お行儀もいいし、意地悪をする子なんかじゃない。
それなのに弥生を怒らせた?
にわかに信じがたいけれど…。
「ねぇねがたいせつにしてるたからものをね…」
……
「壊しちゃったの⁉︎」
先走って慌てた私に、
睦月はふるふると首を横に振った。
ホッ…。
「さわっちゃったの…そしたらねぇね、
すごくおこっちゃって…」
「えぇ?触っただけで?」
けち…。
「うん…。
それで、睦月なんかもういらないって…」
「⁉︎」
身の毛もよだつ、…そんな感覚。
私の中に、怒りにも似た悲しみが渦巻いた。
睦月を強く抱きしめ、慨嘆した。
だってまさか、自分の子がそんな事を…
そんなひどい事を口にするなんて…
私はひどく混乱した。
近頃稀に見る乱れ方だ。
しばらくそうしていたが、私はふと思いつく。
…弥生…あの子と話をしなくちゃ…
私はふらりと立ちあがろうとした。