第17章 愛月撤灯
「わぁ!どうしたの⁉︎どこか行くの?」
俺の姿を見て、睦が嬉しそうに声を上げた。
すぐそばまで来て、
俺の周りをくるりと一周…
「いや、どこも行かねぇよ。
ちょっと前にあつらえたモンだから
まだ着られるか試しただけだ」
「そうなんだ。きれいな色…。
すごくよく似合ってるよ」
目をキラキラと輝かせる。
…いつになく可愛いな。
「お褒めに預かり光栄だね」
睦の頭にポンと手を置くと
嬉しそうに肩をすくめ
「そのままでお出かけしたい」
と、言った。
お出かけ…?
「どこへ」
「おさんぽ」
「急だな」
「素敵な天元と歩きたい」
「…ヘェ」
「みんなに見せたい」
「……お前どうした」
随分と興奮しているみたいだ。
普段言わねぇような台詞が
ポンポン出てくるなぁ。
「だってホントに素敵なんだもん」
「そいつは嬉しいがな」
褒められて悪い気はしねぇ。
「ねぇ、行ってくれる?おさんぽ」
可愛く見上げてくる睦。
…弱いね俺も。
「じゃお前も、
俺が連れて歩きたくなるくらい
綺麗になって来い」
何もしなくても睦は綺麗だがな…
「えぇっ!…はい!」
睦は驚いて、
でも納得したのか、慌てて自室に籠った。
以前、志乃さんに言われたことを
思い出したようだ。
『ちゃんとすればキレイなんだから…』
くくく。素直で可愛いヤツ。
「あのお店、寄ってもいい?」
俺の手を引いてねだる。
あの後、化粧を施し、
よそ行きの着物に着替えた睦と共に
町へと繰り出した。
…何か、さっきからおかしいな。
可愛いのはいつも通りだが
なんだか高揚しているというか…。
「あぁ、いいよ」
嬉しそうに笑い、俺の隣にぴたりと寄り添う。
「……」
なんとなく、睦の額に手を当てた。
「…何?」
少し顔をしかめる睦。
「私、どっかおかしい?熱なんかありませんけど」
「いやいや、他意はねぇ。悪意もねぇ」
額に当てた手で、ポンポンと頭を撫でると
それだけで相殺されたのか
ご機嫌になって目を閉じた。
「…楽しそうだなぁ?」
「うん、楽しい」
「…何か今日、いつもより可愛くねぇ?」
「えぇ?」