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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第1章 嚆矢濫觴




「ほんと?」

「ほんとよ!
その合図は絶対にわかるから大丈夫!」

ポンと背中を叩かれる。
一歩先の、未知の世界に、
足を踏み入れる力をもらった気がした。

「蜜璃ちゃん、…ありがとう」

私が、蜜璃ちゃんの顔を見て言うと、

「睦ちゃんは素敵な女の子なんですもの。
大好きな人と結ばれる権利があるのよ?
心に、素直になってみてね!」

蜜璃ちゃんも私をみて、にっこり笑ってくれた。









この後、仕事があるという蜜璃ちゃんと別れ、
私は一人、家路を急いでいた。
まだ夕暮れ時。
商店街を行く人も溢れていた。
その先に、頭ひとつ分
抜きんでた男の人を見つける。

探さなくても、目に入ってしまうその姿。
お互いに少しずつ近づいて、
何て声をかけたものか悩んでいる時…

宇髄さんの隣を歩く、小柄できれいな女の子を見つけてしまった。

2人は言葉少なに、肩を並べて歩いている。
女の子がにこりと、笑いかける。
心臓がどくんと脈打ち、
物凄いショックが私を襲う。

往来の中、立ち止まっている私は目立つのか、
彼が私の方を向くか向かないかの所で
私は慌てて物陰に隠れた。

いやだ、どうしよう…
何だろう、この気持ち。

何で隠れたりしたんだろう、
普通に声をかけたらいいのに。

でも。出来なかった。
…やきもち?

あの、隣町の店員さんと私が話している姿を見て、
宇髄さんもこんなに苦しかったって事?

何で。
どうかしてる。


「何逃げてんだ、おめぇ」

頭上で声がした。
ばっと見上げると、不機嫌そうな宇髄さん。

「何っ…で!」

「何でじゃねぇ、お前が逃げるからだ」

今、宇髄さんと話したくない。
私はくるりと向きを変え、全速力で走り出す。

「え、おい……っ睦!」

宇髄さんの慌てたような声がしたけれど
私は構わず走った。

自分の中に生まれた
黒くてイヤな感情。
自分で認めたくなかったし、
彼に知られるのもイヤだった。



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