第13章 輪廻
「睦、お前を、愛したい…」
「……え?」
少し警戒をしながら、
至近距離で俺を覗き込み、言葉の意味を探していた。
「意味が、…わからねぇか…?」
涙の残る目尻にもキスをする。
何となく、俺を恐れるような素振り。
……
「…愛されるの、怖いか」
「わからな、い…」
「じゃ、愛されてみ…?わかるから」
もう一方の目尻にも、キス。
「ん……でも、私…処女じゃないよ…?」
悲しそうに言う睦と目を合わせる。
「お前、シゴトシゴトで
誰にも愛されたコトねぇだろ…
俺なんかお前のこと大好きなんだぜ?
ただ欲の処理すんのと
愛があって抱かれんのの違いを
この俺様が教えてやるってんだよ。
「…そんなの、大して変わらないでしょ…?」
「ばっ、かだなぁお前、…」
話していても埒があかねぇと思った俺は
背中や肩を撫でながら、額にキスをする。
睦は肩をすくめて顔を背けようとする。
「ほら、こっち向け」
頬を包んで上向かせる。
「…!待って、やだ…っ」
睦は初めて、強く抵抗した。
俺が、唇にキスをしようとしたからだ。
唇を塞ごうとする邪魔な手をつかむ。
撫でるように、指を絡め取り
きゅっとつないでやる。
相変わらず小せぇ手。
守って、やりたくなるよ。
「…俺のこと好きだと言え」
「えぇ?」
「言わねぇと、キスすんぞ」
「そんなの、…っ」
つないだ手に力を入れて、押し戻す睦。
でも、逃してやる気なんかサラサラねぇから。
こいつの気持ちに気づいている俺は余裕だ。
あとは、頑ななこいつの心を、
いかに解してやるかだ。
「…もちろん、俺の事なんか好きじゃねぇってんなら
突き飛ばして逃げろ。でもお前は、
俺のこと好きだよなぁ?
素直にならねぇと、お前のイヤなキス、
されちまうぞ…?」
抵抗していた手から、力が抜ける。
「好きだ睦…頼むから…」
「……す、き…」
「…ん?」
「…すき」
たったの、2文字。
それが、俺の心を乱す。
胸にひどく響く。
「…やっと、言った」
幸せに、自然と笑顔になる。
「…やっ!てん、げ…っんん‼︎」