第12章 形影一如
「そうだな。…俺のせいだ」
囁きながら頬に口づけるも、
睦の感情はおさまらない。
「も…いや。はなして…っ」
心と体は裏腹だ。
体の変化に、心がついて来ない。
…身体を治めたい?
それとも、心を優先させる…?
「はなしてよぉ…」
泣き出してしまった睦を抱き寄せた。
「離せるわけねぇだろ」
「いい、から…っ」
腕を突っぱねて拒否する睦。
「泣いてんだろうが」
「泣いてない」
「はいはい」
近づけた唇から離れようと、
思い切り俺の耳を引っ張った。
「いてて、お前なぁ…」
「はなれて…!」
「離れねぇ。俺にしか、治めてやれねぇだろ?」
「…っ。やだっ」
……そうだろうなぁ。
昨日、散々ヤったもんな。
俺は深いため息をついた。
「…俺を責めろ」
「…は、い…?」
俺は攻めるから。
……なんて事を今言えば、
俺は死ぬよりひでぇ目にあうだろうな……
「俺のせいだ。お前はイヤなのに、
俺がムリヤリ抱くんだよ」
首筋に、囁きを埋める。
「…っい…やだ…っ」
「そう、お前は逃げろ。俺のせいにしろ。
ごめんな睦…愛してる…」
「…っ…」
声にならない喘ぎは空気に溶ける。
俺は最後まで睦の素肌に、
建前の謝罪を囁き続け、
睦は泣きながら俺を拒んだ。
それでもコトの後、そっと寄り添ってくれたから、
きっと俺は許されたんじゃないか、な?
睦の気をそらし機嫌を完全に直すのは、
やっぱりメシだった。
広縁の椅子に座り、
大きな窓から景色を眺めていた俺は
睦を呼び寄せ膝の上に座らせると、
1日の始まりを迎えた景色を2人で楽しんでいた。
そこへ昨日の仲居が現れ、
朝の挨拶と共に食事の準備を始める。
慌てて下りようとした睦だが
気を使うなと仲居に言われ、
俺の上で小さくなっていく。
「本当に仲のよろしいこと」
にこにこという仲居に、
「ごめんなさい…」
と、なぜか俯き謝る睦。