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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第1章 嚆矢濫觴





それから1週間が経った。

私は素材の買い付けに来ている。
私の家を挟んでお店とは反対方向の隣の町まで足を伸ばしていた。

ここまで来れば、珍しい素材も手に入る。
たくさん歩いていい運動にもなるしこの辺りは自然豊かで、気晴らしにもなる。

天気も良くて、のどかな景色。
私は買い漁った物を抱えてゆっくり歩く。
小さな商店街。行き交う人々もどこか浮き足立って、
もちろん私も浮かれ気分だ。

良いものが買えた。
思い描いていた、あれもこれも作れるようすべて揃えた。

店を休みにしてまで、ここに来た甲斐があった。
このまま店に戻って、今日は作業をしよう。

すると後ろの方で、誰かを呼ぶ大きな声がする。
何の気なしに振り返ると、私に向かって走ってくる男性の姿。

「すみません、お客さん!」

その人は息を切らし、私の前で止まった。
少し息を整えると、

「買っていただいたのに、
お渡しし忘れたものがあって…。
間に合って…、よかった」

私は袋の中を確認する。

「わざわざありがとうございます」

差し出された品物は、
光の具合でキラキラ光る、深い青色の石だった。
大振りのその石は、広くて深い海を思わせて、
何を作る予定もないのについ、
買ってしまったものだった。

私は透明の袋に入れられたそれを、
そっと受け取った。

「あぁ…ありがとうございます。
これ、とても気に入っていたんです」

その石を見つめ、私はつい微笑んでしまう。

「本当ですか?
その石は僕が仕入れたんです。
店主にはサイズが大きすぎて
買い手がつかないと叱られてしまったのですが…
あなたに見初められて良かった」

安心したように、その人も笑った。
何て優しく笑うんだろう。
それにしても…

「すみません、ちょっと失礼します」

私は彼の頭に手を伸ばす。
そして、髪に付いた葉っぱを取り除いた。

「あ、店の前の生垣に突っ込んでしまって…
お恥ずかしい」

「構わず走って下さったんですね。
ありがとうございます」

「僕が選んだものを買って下さったのが嬉しくて…」

照れたその人は頬を染めてそっぽを向く。
何だか、可愛らしい人だ。男性に失礼だろうか…

「足をお止めしてしまって申し訳ありませんでした。
また、いらして下さいね」

私も軽く会釈をして別れる。
歩きながら、この石で何を作ろうかを考えた。

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