第11章 愛心
薬指に輝く、それを
2人で見下ろして……無言。
…こんなことがあるだろうか。
こんな、…。
じわじわと後からやってくる感動に
目を潤ませていると、
彼もやっと実感したのか、
突然、思い切り抱きしめられた。
言葉もなく、2人ずっと抱きしめ合って
ただ、お互いの体温を、感じていた。
「うま。やっぱ睦のメシうまい」
「うまいったって…お刺身ですよ…?」
あの後、魚が傷まないうちに、
急いで海鮮丼にして出した。
「酢飯とヅケの具合が丁度いいんだよ。
ホラ、食え」
「…いいです。後で」
「また食わねぇつもりか?」
「…じゃ離して下さいよ。食べにくいから」
宇髄さんは私を自分の膝の上に乗せ
両腕で包み込む形で
どんぶりを手に持って食べていた。
美味しそうに食べてくれるのは嬉しいけれど
私はちょっと狭いです…
「離すわけねぇだろ。俺のなんだから」
…新しいおもちゃをもらった子どもじゃないんだから。
「私このままじゃ食べられません」
「だから食えよ、ホラ」
私の口元に、
自分のどんぶりの中の刺身を差し出す。
……
「そうじゃなくて…」
「別に照れなくていいぞ?」
「照れてるんじゃないの!離してったら」
「…何で」
…何で?
「ごはん時にお行儀が悪いと思いませんか?
ちゃんとして下さい」
私は真面目に言うのに、
「多少行儀が悪くても、
俺のこの喜びは止まらねぇわけよ」
でも宇髄さんも至って真面目に答えた。
「喜びって…じゃあそれはまた違う形で…」
話している途中に、
弾けるような口づけをされる。
「違う形って…こんな?」
「…ち…違うに決まってるでしょう⁉︎」
「おい暴れんな!メシこぼすだろうが!」
「誰が悪いのよ!いい加減にして!」
「わかったから!
…しょうがねぇな。じゃお前そこな」
私を膝の上から下ろしてテーブルにつかせた。
やっとちゃんと食べられる。
と、思っていると、
私の左側面にぴったりとくっついて座る宇髄さん。
「…どこにもいかないから」
「どっか行くとかじゃねぇの。
幸せに浸ってるだけだから」